「専攻医/後期研修医をやめて産業医」になろうと考えている若手医師へのアドバイスまとめ

私自身、専門医資格の取得もできていない内に後期研修医をドロップアウトしています。ですので、同じような道を辿ろうとしている人たちの気持ちは痛いほど分かります。

当時のことを今から振り返れば、「こうしておけばよかったな…」という後悔もありますし、過去の自分に今、アドバイスしたいこともあります。

辛い日々を過ごしていると、つい近視眼的になってしまい、長い人生におけるキャリアを考えることはできなくなってしまいます。結果、「この場から逃れたい」という気持ちが先行し、安易に転職してしまう、ということになりがちです。

テレビ番組の『しくじり先生』のように、私の失敗を元に、同じ轍を踏まないようにしていただければと思います。

今の職場でできることはないか?

私の場合、当直やオンコール、救急対応の当番などがストレスの要因となっていました。結果、不眠症状の悪化が見られ、常にイライラして仕事も荒れていきました。

その様子を見かねて医長が叱り、私はその医長を避けるようになってしまいました。そのため仕事の相談もできず、さらにお叱りを受ける…という悪循環に陥ってしまいます。

この悪循環を断つためには、やはり体調面や仕事についてしっかりと医長に相談し、立て直しを図ることが必要でした。「腹を割って話す」ことはとても重要です。

専攻医をドロップアウトしそうな若手医師がとるべき2つの行動
私は後期研修の途中、専門医資格を取得できずに勤務していた病院を退職しています。同様に、専攻医を続けることができず、ドロップアウトしてしまってどうしようか…と悩まれていらっしゃるかもしれません。 専攻医でのつまづきの原因は様々ですが、初...

上司もあなたの全てを把握しているわけではありません。「なるほど、そんな大変な思いをしていたのか」「体調が悪かったとは知らなかった」となる可能性もあります。その上で、業務負荷の軽減などについて相談しましょう。

それでも改善せず、「周りはもっと頑張っているぞ。だから君も頑張れ」「私が若い頃は寝ずに働いたものだ。頑張りが足りないぞ」などと言われるようでしたら、その時は転職を考えましょう。

「ダメ元でいいから」相談してみる

「相談したところで変わらない」と諦めていらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。実際、私も「どうせ…」と思っていました。

しかし、「最後だと思って相談してみよう」と覚悟を決めて相談することは大事だと思います。それで変わればいいですし、ダメだったとしてもその時は転職するなり、別の進路を考えればいいのではないでしょうか。

私は、こうした相談せずに辞めて後悔しています。「あの時、色々と相談していたら、また状況も変わっていたのではないか」と思うこともあります。

指導医のハラスメントは別問題

指導医のセクハラ・パワハラなどで悩んでいる場合は、これまた別問題です。「話し合って解決できる」という事柄でもないですので、その場合は医長やプログラム統括責任者などへの相談をまず行いましょう。

なお、「自分が仕事できないから悪い。パワハラと言っても、取り合ってもらえないだろうなぁ…」と思っていても、一度はぜひ相談しましょう。相談しても改善しない、結論や対処に疑問が残るということでしたら、日本専門医機構「専攻医相談窓口」に相談することも可能です。実際、ハラスメントが疑われる報告は年間数十件寄せられているようです。

このようなハラスメントの場合、事実確認をされると思われますので、「どのような発言や行為があったのか、証拠集めをしておく」こともしておいた方がいいと思います。「どんなことを言われたのか、どんなことをされたのか」しっかりと記録しておくようにしましょう。

体調不良なら「休む」ことも必要

特にメンタル疾患の場合、必要以上に現状を悪く捉えてしまったり、悲観してしまうこともあります。正常な判断ができない状態で退職や転職のことは、やはり考えるべきではないと思います。

私は産業医として、メンタル疾患の社員さんに「重大な決断は、病状が改善するまで先送りしましょう」とアドバイスしています。

いっそのこと、退職する前に「まずは休養する」ことを考えてみてはいかがでしょうか。主治医を受診の上、「休業を要する」の一筆があれば、「休むな、働け」とは言われないと思います。

ただ、復職する上で、また同じ条件で働き続ければ体調が悪化することは目に見えておりますので、上司と業務負荷軽減についての相談をする必要があります。当直やオンコール回数、入院患者の受け持ち人数などについて、制限を設ける形で相談してみてはいかがでしょうか。

産業医になる上でのメリット・デメリットを知っておこう

産業医になる上で、「産業医のことを先輩医師から聞いた。楽そうだし、なってみようかな」程度で安易に飛び込んでみようとしている方、ちょっと待った。

これ、過去の私です(笑)産業医が性に合っていて本当によかったと思います。

まずは産業医になる上でのメリット、デメリットを知りましょう。

勤務医が産業医に転職する「メリット」と「デメリット」とは
産業医をやっておりますと、勤務医の友人からは「残業もなく定時で帰れるんでしょ?」「当直やオンコールもないし、土日祝日も休める。最高じゃない」と、若干の皮肉まじりに言われることもあったりします。 たしかにそうしたメリットは享受できている...

「残業なし・当直やオンコールなし・時間外問い合わせや呼び出しなし」などのQOMLばかり目が行きがちですが、産業医なりの苦労や臨床医に比べてのデメリットもあります。そのため、まずはしっかりと産業医になる上でのメリット・デメリットについて知っておきましょう。

なお、年収を心配される方も多いですが、バイト代含め、「臨床医の平均年収並には稼ぐことができる」と言えます。

専攻医/後期研修医を辞めて「30代で常勤産業医」になったら年収はいくら?
私が専攻医を辞めて産業医になったのは、30歳になって間もなくです。初めて常勤産業医になった会社は、1日8時間勤務、週4日勤務で年収1千万円でした。これは「臨床医時代と据え置きの年収にして欲しい」と希望した交渉の結果でした。 これに、週...

具体的には、週4日の常勤勤務+週1非常勤外来バイトで、1400~1500万円前後は無理なく稼げると思いますので、その点はあまり心配しすぎなくてもいいと思います。

最終的には、「専攻医/後期研修医を辞めるかどうか」という判断、悩みになってくるかと思いますが、その点につきましては、

後期研修でドロップアウトしていい医師、しちゃいけない医師の違い
私は後期研修医でドロップアウトして、現在は産業医として勤務しています。そこで思うのは、後期研修医(現在の専攻医)でドロップアウトしていい人と、しちゃいけない人の違いがあるな、ということです。 私はこのような記事を書いており、 ...

こちらの記事をお読みになって検討してみることをおすすめしたいと思います。簡単にご説明しますと、

・あなたにとって仕事って何?
・「医師という仕事」へのこだわりはどの程度?
・リスクをどの程度許容できるか?

この3点をまずは自分自身に問いかけてみるということであり、問題がなければ堂々とドロップアウト(どこか矛盾したような表現ですけども)すればいいのではないでしょうか。

転職する上で「産業医である必要はあるか?」と考えてみる

転職するにしても、当直回数を減らしたり、「業務量の負荷軽減を図った臨床医での転職」も可能なはずです。「楽そうだから産業医」という理由だけでの転職は、あまりオススメできません。

私自身も、「専門医資格をとっておけばよかったな…」「もうちょっと臨床を続けてから産業医になってもよかったのでは」と後悔することもありました。

この点、リクルートドクターズキャリアや、エムスリーキャリアの転職エージェントに相談しますと、希望の求人を紹介してもらえると思います。

「辞めるタイミング」も重要

産業医になるにしても、やはり先立つものはお金です。「現時点で、年収をどれぐらい稼げるのか」ということは重要だと思います。

専攻医(後期研修医)だとして、「自分にどの程度の知識・技能があるのか」ということは客観的に見ておくべきではないでしょうか。「外来で、なんとか一人で診療できる」「病棟管理の業務も対応できる」「当直もできる」というようなことですと、やはりバイトの選べる範囲が広くなり、それはつまり年収に直結します。

ですので、専攻医(後期研修医)を辞めて産業医になる上では、「ある程度のバイトができるスキルや知識」を身につけた上で辞めることを考えた方がいいかな、と私としては思います。

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