【2024年度版】「専攻医の途中で」転職しようか迷っている若手医師がチェックすべき5つのポイント

私は後期研修医の時にドロップアウトしてしまい、勤務していた病院を退職してから産業医になりました。「臨床医(勤務医)に向いていない」と薄々は自覚がありましたが、それでもそれを認め、「よし転職しよう」と考えるに至るまでは長い時間がかかりました。

同様に、専攻医として日々研鑽を積みながらも、「転職しようかな…どうしようかな…」と悩まれている方もおられるのではないかと思います。そんな方々にとって、その苦しい状況をどうしたら変えられるのか、またどう考えていったらいいのか、その一助となればと思い、この記事を書いてみました。

前提として、私もそうですが、「自分は臨床医(勤務医)に向いてないのでは…」と悩んでいたり、「そもそも、医師になるということに強い希望をもって医学部に入ったわけではないからなぁ…」という方向けの記事となっておりますので、その点はご了承いただければと思います。

周囲との「温度の違い」を感じてませんか?

初期研修が始まり、私が真っ先に感じたのは「あれ?周りの温度高くない?」という点でした。やる気に満ち溢れ、「楽しそうに研修をしている」同期を見ていて、違和感を感じていました。

それが専攻医になり、日々「やらなければならないこと」のタスクに追い立てられ、人間関係にストレスを感じながら過ごす中で、その違和感は大きくなり、さらにはストレスを感じ続けていきました。

根本は、やはり「医師になりたい、医師の仕事をしたい」と強く願っている人たちとの温度差であったと思います。「なんとなく医学部」「なんとなく初期研修医」そして「なんとなく専攻医」になり、やりたくないことばかりが増えていくのに耐えられなかったのだと思います。

プライベートが削られるストレス

「やらなければならない仕事」が増えていきますと、次第にプライベートの時間が削られていきます。「学生→初期研修医→専攻医」となる中で、プライベートでやりたいことができないことが増えていくわけです。

おそらく、これがもっとも大きなストレスであったと思います。週末が近づく金曜日、ICUに入院する患者さんを「はい、よろしくね」と言われると、不機嫌な表情は隠しきれず、医長からしたら「なんだ、コイツ」と思っていたに違いありません。笑

当直、オンコール、そして定時を迎えてから延々と続くカンファレンス。こうしたことが今後も延々と続くと考えると、本当に身悶えするようなストレスを感じていました。

ストレスの悪循環

仕事でストレスを溜め込んで、帰宅すると「やっと自由になった」と思い、そこから延々とオンラインゲームをしていました。「寝たら明日になってしまう」ということで、「寝たくない」ということも理由にはありました。

結果、寝不足で日中の仕事に支障が出ることになります。ミスをやらかして医長に注意され、ミスをごまかすようになってさらに医長から叱られる。また、やってはいけないことですが、イライラして看護師にも当たってしまったり、キツイ言動になる。そしてさらに叱られる…こうした悪循環の中で、次第に医長を避けるようになっていきました。

コミュニケーションをろくにとらないため、医長も「なんだアイツは」と思っていたでしょう。そうすると、会うたびに小言を言われるようになり、結果、さらに避けるようになるわけです。

こうしたストレスの悪循環については、産業医をしていて面談の中で社員さんからよく聞きます。私だけでなく、「あるある」なのかなと思ったりもします。

「処世術」って身につけられてます?

おそらく、私のように「周囲より温度が低い」若手医師もいると思いますが、私よりは如才なく立ち振る舞えている人が多いでしょう。

「医長・先輩としっかりコミュニケーションをとって、報告・連絡・相談は欠かさない」「看護師やコメディカルとも良好な関係を築くことができる」「プライベートは大事にしつつも、やるべき仕事はしっかりミスなく終わらせる」ということができれば、私のような結末にはならないわけです。

「処世術」と言いますと、「アイツは世渡り上手だから」ということで悪く言われがちですが、むしろ「文句を言われない、批判されないため、つまりは自分の身を守るすべ」の一つであると思います。

だからこそ、「自分から挨拶したり、コミュニケーションを積極的にとろうとする」「出席必須(の空気である)飲み会や食事会には出る」「上司への報告・連絡・相談は必須」といったことはやってしかるべきかと思います。

「人見知り」の弊害

年齢を重ね、40歳を超えてくると人見知りも少しはマシにはなってきましたが、30歳前後の頃は本当に「人見知り」の弊害を痛感していました。

報告・連絡・相談をすべき相手に対して、上手く話をすることができない。学生時代からあまり人に接することがなかったことが原因であったとは思いますが、臨床医(勤務医)として、このコミュニケーションは非常に強く求められるスキルだと思います。

この年齢になり、「処世術」をある程度は学んできた今となって振り返ると、「もっと上手くやれたらよかったのになぁ」と思うこともあります。

少なくとも、「これは仕事なんだ」と割り切って、人見知りを発動させないようにするといった切り替えができていたら、少し違ったのにな、と思うわけです。

キャリアについてどう考えてます?

上記のことを踏まえ、
・周囲との「温度差」を感じている。
・そもそも、医師という職業にやりがいを感じにくい。
・ストレスを日々、溜め続けているように感じている。
・「処世術」が足りず、特に上司と人間関係でしくじっている。
というようなことでしたら、「転職」を考えることも一つの手であるように思います。

ただ、専攻医の時にドロップアウトしますと、専門医資格を取得できない、キャリアの上積みが難しいというデメリットもあります。「やむを得ない事情」がある場合、研修プログラムの移動(病院の変更)などはできますが、ここで言う転職とは「専攻医であることをやめる」選択と便宜上したいと思います。

私が後期研修医の時、日々「この生活、働き方をこれから何十年と続けるのか…」と絶望的な気持ちにになりました。「それは無理だな」と、そもそも結論は出ていましたが、それでも踏ん切りをつけることがなかなかできませんでした。

これからの進路・キャリア、そうしたことを考えると、やはり「よし、転職しよう」という決断はなかなかできないと思います。

「やりがい」についての考え方

では、結局のところどうして私が後期研修医をドロップアウトしたのかと言いますと、それは追い詰められて「ええい!やめてしまえ!」という気持ちになったというのもありますが、「仕事のやりがい」について思ったことがあったからです。

「仕事にはやりがいを求めるべきだ。そうでないと、人生の意味がない」という意見もあるかもしれませんが、私の場合は「そもそも医師には『なんとなく』でなっている。勤務医で働いていても、やりがいを感じにくい」という状態でした。

「そんな私はどうしたらいいんでしょうか?」と思っていたわけですが、結論として「仕事にやりがいは求めない。お金を稼ぐための手段だ」と割り切ることにしました。代わりに、「仕事ではなく、プライベートを充実させてやりたいことをやる。それで充実感を得ることにする」ということで大分、楽になりました。

そもそもの先入観で、「仕事=やりがいのあることをする」と思い込んでしまうことで私のように苦しくなる人もいます。ですので、「仕事でやりがいを感じにくいなら、他のことで人生を充実すればいいじゃないか」と思うことも一つの手だと思います。

きっと、あのままストレスを溜め続ける生活を続けていたら…と思うと怖くなります。産業医として社員さんと向き合い、話を聞いていると、「どうしても、根本的に合わない仕事はある」と気付かされます。結局、私は勤務医という働き方が向いておらず、適応できなかったというわけです。

リセットする?リスタートする?

「転職しようかな」と思った時、リセットすべきなのか、それともリスタートすべきなのかという違いがあります。まずは、この点を念頭に置いて考える必要があると思います。なお、このリセットとリスタートは便宜上、私が勝手に呼んでいるものです。

「リセット」とは、転職して業務内容などは大きく変えずに、職場のみを変えるというイメージです。「リセット」することで上手くいく場合もあります。ただ、私の場合は当初、「療養型の病院で、当直なしで内科医として働く」ということを考えましたが、こうした「リセット」では上手くいかなかったのではと思います。

一方で、「こじれた人間関係(特に上司との)をリセットする」という目的での転職であれば、上手くいくかもしれません。ただ、「今まではこの点が上手くできなかった。次こそはここを上手くやろう」と思い、新しい職場では反省点を活かす(処世術を身につける、など)、という姿勢は必要になるかと思います。

一方、「リスタート」転職とは、勤務医→産業医のように、全くサラの状態から始めるという転職です。まさに心機一転、リスタートをすることになるわけで、「今の仕事が合わない。全く別の仕事をしたい」という希望には合致しますが、一方で、未経験であるが故に、果たしてその仕事が実際に合っているのか分からない、また「今までの知識や経験が活かせない可能性もある」というデメリットもあります。

自分に合った仕事であったときのリターンは大きいかもしれませんが、その一方でリスクも大きい転職になるかもしれません。基本的には「リセット」転職の方をおすすめしますが、私のように「もう勤務医は無理だ…」という前提の時には「リスタート転職」が必要になると思います。

この「リセット」と「リスタート」の違いを意識した上で、どちらにするか転職は考える必要があると思います。

ストレスの要因を探る

ストレスの要因が「人間関係なのか」「業務内容なのか」「業務の量なのか」といった違いにより、リセットすべきなのか、リスタートするべきなのかという判断にもなってくると思います。

単純に「人間関係がこじれてしまった。上司はもう私のことをダメ部下だと認識してしまい、やることなすこと否定してくる」という状態でしたら、リセットしてみるというのも手でしょう。

一方で、私のように「勤務医としての働き方にもう耐えられない。ストレスを溜め込んで、結果、人間関係も悪化させてしまう」ということでしたら、リスタートが必要になるかもしれません。

「ストレスでイライラする」というのはわかりますが、「では、その原因はどこにあるんでしょうか?」ということを振り返り、改めて「そのストレスを取り除くにはどうしたらいいんだろうか」という視点で考えることは必要なことだと思います。

「疑似・転職活動」のススメ

大なり小なり、職場や仕事には皆さん不満を持っているのではないでしょうか。ですが、全員で「本気で転職を考えている」なんてことはないわけで、その本気度合いにもグラデーションがあると思います。

ただ、「もう限界!転職してやる!」と思った段階で発作的に退職、転職をしようとすると痛い目を見ます(経験談です)。しっかりと準備や時間をかけて転職活動はするべきです。

そこで、提案したいのが「疑似での転職活動」となります。「本気じゃないよ。いつでも引き返せるよ」という意味での「疑似」ですが、それは次のようなものです。

「求人票」を見てみる意味

私自身、転職活動をするまで「求人票」を見る機会などありませんでした。ですが、「転職しようかな…」と悩んでいる、考えている段階でぜひ「求人票を見てみる」ことをおすすめしたいと思います。

というのも、そこにはおおよその年収、勤務条件などが掲載されています。私が初めてその求人票を見た時に思ったのは、「え?専門医資格もない、後期研修医が意外とこんなに年収もらえるの?」ということでした。

今と同じような勤務条件、あるいは今より良い条件(私の場合は、当直なしで探していました)で、どの程度の年収をもらえるのか、つまりそれは「今の自分の価値を知る」一つの手助けになります。

結果、「いや、やっぱり専門医資格はとらないとダメだな」と思うか、あるいは「この条件なら転職しよう」と思うか分かりませんが、それでも「求人票」を頼りに、転職をするか否か、具体的に考えてみることは重要だと思います。これが「疑似・転職活動」の一環です。

転職エージェントと「本音で」相談

私が最初、リクルートドクターズキャリア[PR]の転職エージェントと相談をした時には、本音で相談することができませんでした。

それは、「専門医資格もない。しかもまだ医師歴10年未満。そんな私が当直なし、オンコールなしで働けるところを探してるなんて言ったら、笑われるんじゃないか…」と思ったからです。

また、別の機会にエージェントと話をした際、「産業医の仕事にも興味があって…」と相談をすることができませんでした。これもまた同様の理由で、「未経験の私がそんなことを言っても、そんな求人ないって言われるのがオチじゃ…」と思ったからです。

ですが、実際に相談してもらえれば思いますが、笑われませんし、「そんな求人ありません」と冷たくあしらわれることもないです。だからこそ、「当直なしが良い」「今のところよりゆるく働けて、年収アップできませんか?」といった本音の部分をしっかりと伝えましょう。

転職エージェントとの話し合いで、本音、本当の希望条件を隠していたってなんら良いことはありません。ですから、リクルートドクターズキャリア[PR]などの転職エージェントに相談する時は、正直に希望を伝えましょう。

「転職活動」は引き返せる

たとえ転職活動をしたからと言って、「何がなんでも転職しなければならない」ということではありません。転職エージェントに相談し、求人紹介を受ける。そうしたことをしても、「やっぱり、気が変わった」ということで転職活動を中断することもできます。

「何がなんでも転職しなさい」と命令されることもありません。だからこそ、「引き返せる」と思って、まずはリクルートドクターズキャリア[PR]などに相談するなど、一歩を踏み出してみるのはよろしいのではないでしょうか。

ただ、注意点としては、「同僚や先輩、同期などにも転職活動のことは一切話さない」ということが必要です。どこから転職の話が漏れるか、どのように伝わるかは分かりません。あくまで「自分の中だけに留めておく」ことは重要です。

その上で、「疑似・転職活動だ」「引き返せる」と思って行動に移してみるのはよろしいのではないでしょうか。

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転職活動の進め方

転職活動を本格的に考えていくにあたって、その進め方についてもポイントがあり、それを誤ると遠回りをしてコスパが悪くなってしまう可能性があります。

実際、私もかなり遠回りをしてしまいました。その反省点を踏まえ、効率的な転職活動はどのように行えばいいかということについて、ここでは「転職活動の進め方」にフォーカスを当ててご紹介したいと思います。

求人選びまでの流れ

転職活動のイメージですと、「求人選び→希望の求人に応募→書類選考・採用面接」というものかも知れませんが、「求人選び」の前にぜひやってもらいたいことがあります。それは、

1) 転職の目的を決める。

2) 希望条件を洗い出して、優先順位を決める。

3) 求人選びを開始

ということです。実は、いきなり求人選びから入りますと、必ず迷ってしまって「決められない」ということになりかねません。そもそも、希望条件で絞っているため、「横並び」な求人がそこには列挙されているはずですので、迷うのは当然です。

ですので、「1) 転職の目的を決める(何のための転職なのか、をワンセンテンスで説明できるようにする)」「2) 希望条件を洗い出して、その優先順位を決める」ということをあらかじめ行い、「転職活動における軸を決める」ことでブレないようにしましょう。

ちなみに、リクルートドクターズキャリア[PR]などの求人紹介会社に相談をし、求人を紹介してもらう。その時にも、実はいきなり相談するという前に、「今回の転職目的は何か?」「希望条件は何か?その優先順位は?」と整理しておくと、相談の時にスムーズになります。

具体的には、転職目的としては「当直やオンコールはもう無理だから、自分に合った働き方をできる転職」「今後のことを考えて、キャリアアップを図る転職」「とにかく年収アップを実現するための転職」などです。

希望条件としては、その目的を果たすためにどのようなファクターが必要なのか、つまりは「年収は1200万円以上」「週4勤務」「勤務時間はこのぐらい、残業はこのぐらいがいいな」「当直やオンコールは月このぐらいの回数以内で」などと決めていき、その優先順位を決めていきましょう。

「段階的な」求人選び

優先順位をつけた希望条件で考えてみても、それは決めかねてしまうというところでしょう。ですので、「いきなり求人票をもらって、その場ですぐ決める」ということではなく、段階的に求人選びをしましょう。

もらった初日、まずはそれぞれの求人の良い点、悪い点をメモして残しておきましょう。また、最初に見た時の印象などについても書いておくと、後々役立つことがあります。

その次の日、5つの求人があったら、そこから3つに絞ってみる。さらに次の日、3つの中から「応募したいのはどれか」と見てみることをおすすめします。

この「別日にして、間隔をあけて求人票を改めて見てみる」ということが重要なポイントです。冷静な目で、繰り返し比較検討することで細かな点を踏まえて判断できるようになるはずです。

エージェントにフィードバック

求人選びをした上で、「今回はエントリーを見送る」ということもあるはずです。その場合は、ぜひエージェントに「実はこの求人とこの求人で迷ったのですが、結果は応募しないことにしました。その理由としては…」ということをメールなり、電話なりで伝えておきましょう。

ドクターとエージェントとで、やはり「認識の違い」というのは生じることもあります。特に、希望条件の優先順位などは齟齬が生じやすい点です。ですので、その認識を補正するためにも。「フィードバックを行う」ということが大事なことになります。

「別の求人紹介会社に登録しよう」と思うのではなく、ぜひまずは求人を紹介したエージェントにフィードバックしてみましょう。意外とそこから「では、この求人はどうでしょうか」という形で、自分の条件に合った求人を紹介してもらえることもあります。

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若手医師で、特に「初めての転職をする」ということになりますと、とにかく悩む場面は多いと思います。「求人、とりあえずいっぱい紹介してもらったけど、結局どこに応募しようか…」「いくつか応募してみたけど、どこに入職すればいいんだろう…」「そもそも...
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