厳しい労働環境下で、日々切磋琢磨されている臨床医のドクターの中には、「産業医って、社員の話を聞いて定時までいればいい仕事でしょ?」と思ってらっしゃる方もおられるようです。
「せっかく医者になったのに、臨床医として頑張らず、単に自分の人生の時間を切り売りするのはもったいない」というようなことを言われたこともありました。他にも、「産業医なんて年とって、他の仕事ができないようになったらやればいいじゃない」という方もおられました。
私としては、「そういう考え方の人もいるよな」と軽く受け流してはおりますが、特に専攻医のドクターが「臨床医に比べて楽そうだから」と産業医になり、「時間の切り売り」的に働いてしまうのは不幸だと思いますので、その点、今回の記事では書いてみたいと思います。
分からないことは素直に質問
これは、私が一社目に入職した際にできなかったことですが、分からなくても「分からないです。それってなんです?」と質問することができませんでした。
ベテランの保健師や人事労務担当者の間で飛び交うワードの意味が分からず、「え?え?」という状態でしたが、分かったフリをしてスルーしてしまっていました。また、面談でも「え…この事態、どうしたらいいの?」と思っても何もできず、結果としてズルズルとフォローアップの面談を繰り返すだけ、なんてこともありました。
結果、あまり知識・経験が身につかず、まさしく「時間の切り売り仕事」になってしまっていたと思います。特に一社目では、他に産業医のいる企業に入職して、「とにかく分からないことは質問・相談する」ということができるといいのではないか、と思っております。
変えてくれたきっかけは、先輩産業医が「分からないことは素直に聞く」ということを実践されているのを見たことです。「こんなベテラン先生でも質問をするんだ」と驚いたこともあり、私自身もちゃんと質問するようになりました。
キャリアについて考える
産業医ですと、「まず産業衛生専門医資格を取得して…」という方はあまりおられないと思います。
企業が「産業医も専門医資格がないとね」という考えになれば話は別でしょうけども、今のところ「とりあえず認定産業医の資格があれば」という形で産業医を採用している現状ですので、あまり専門医資格を取得するメリットが(転職の上で)高くないのかな、と思われます。
また、専門医資格の受験を行う際には、認定を受けた施設・企業での研修が必要となるわけで、この点も「専門医資格は諦めよう」となる一因かなと思われます。
そこで、資格で言いますと、「労働衛生コンサルタント」の資格を取得することを目指す産業医の先生は多いです。というのも、認定産業医の更新のために「産業医学講習会」を受講していますと、「筆記試験免除、口述試験のみ」になるため、受験を考えるのではないかと思われます。
このようなキャリアアップのことを考えておりますと、自然と勉強するようになったり、経験を積極的に積もうと思えるので、「時間の切り売り仕事」からは脱却できるのではないか、と思われます。
有名企業への転職
上記の「産業医のキャリアアップってなに?」という話の続きにもなりますが、とりあえずのところは「常勤産業医として勤務する」という経験年数は重要だと思います。
とりあえずのところ「一社目に勤務する」という経験の有無は重要であり、またどのような業種の企業にどの程度勤務しているのか、ということもキャリアを考える上では重要かな、と思われます。
一つの会社に長らく勤務するのも重要ですが、一方で企業のネームバリューというのはあると思います。もちろん、そればかりを目指すのはどうかとは思いますが、「知名度の高い大企業や、思い入れの強い企業に入職したい」と考えて、一つのキャリアアップの目標としてみるのもいいと思います(2社目以降で)。
実際、
には、結構名のしれた大企業の求人も掲載されることがありますので、ご登録の上、転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
以上です。
上記のような3つのポイントを念頭におくことで、臨床医→産業医と転職をしたとしても、時間の切り売り仕事にはならないで済むのではないか、と私としては思っております。もし専攻医から産業医になろうとお考えの先生がおられましたら、ご参考にしていただけますと幸いです。