専攻医(後期研修医)が産業医へ転職する上で躊躇しがちなポイントまとめ

私も後期研修医から転職をする際、大変迷いました。そもそも初めての転職である上に、今までの内科医としてのキャリアから大きく方向転換をするわけで、そのような変化に「不安になるな、躊躇するな」という方が無理だと思います。

まさしく今、専攻医のドクターで「産業医に転職しようかな」とお考えの方も、同様にお悩みなのではないかと思います。そこで今回の記事では、「専攻医(後期研修医)が産業医へ転職する上で躊躇しがちなポイント」についてまとめてみました。

キャリアについての不安

すでに専門医資格を取得した方は別でしょうが、専攻医(後期研修医)半ばでの産業医への転職ということになりますと、それはすなわち「専門医資格を取得する」ということを一度は諦めることになるわけです。

私もこれはとても不安に思っていました。そもそも専門医資格を取得するのが当然と思っていましたし、「資格もなく研修病院から離れる」ことで今後やっていけるのかという点で非常に不安でした。

この点は非常に迷いますし、大きな分岐点となります。いわば、「臨床医を続けるのか?産業医となるのか?」という問いになるわけで、一番の悩みどころだと思います。

結局は「何をやりたいか?」

後期研修医の時は、月曜日や当直の日が来るたびに憂鬱で、「早く勤務医を辞めたい」ということばかりを考えていました。退職・転職のきっかけとして、「病院から離れたい」という気持ちがあったのは間違いないと思います。

そこからなぜ「産業医」の道を選んだかと言うと、結局は産業医の仕事に「興味があって、やってみたいと思ったから」だと思います。当時、ネット上にはわずかばかりの情報しかありませんでしたが、産業医についての情報を集めまくり、研修会で講義を受けたことで「やってみたい」という気持ちが高まったからだと思います。

もし「産業医、やってみたいかも」と少しでも興味や関心がおありということでしたら、研修会を受けてみるといったことで、「一歩踏み出してみる」ことで、その気持ちを確かめることができるのではないか、と思います。

私も当初は、急性期病院→療養型病院に転職をしようと試みていました。しかし、内定辞退したのは、結局は「どうしてもその転職をしたい」という気持ちが固まっていなかったからだと思います。

「適性」は自分にあるのか?

産業医の仕事で言いますと、体力勝負であるわけでもなく、高度な手先の器用さを要することでもありません。だからと言ってはなんですが、「極端に人を選ぶ仕事」ではないと思います。

続けるには、やはり産業衛生分野に興味・関心があったり、産業医という仕事を楽しいと思えるかどうかにかかってきますが、始めるには間口は広い仕事だと思っています。

だからこそ、「自分に産業医の適性はあるのだろうか?」とあまり悩みすぎる必要はないと思います。上記のように、「産業医、やってみたいかも」という興味・関心があるということの方が重要であるように思います。

臨床も続けたい…という悩み

産業医の中には、「完全に産業医の業務のみを行い、複数の大企業を股にかける」という方もいらっしゃいます。ですが、多くのドクターは「常勤産業医をしつつ、週1日は非常勤でバイトを行う」のではないかと思います。

私自身も、内科の非常勤外来バイト、AGAの在宅オンライン診療バイトを行っており、「完全に臨床との接点がない」というわけではありません。後期研修医の時には、あれほどイヤだった病院での勤務も、まるっきりないとなると寂しいものです。その点、週1~2回の外来バイトですと、ストレスなく勤務できるので良い距離感ではないか、と思っています。

「臨床も続けたい」ということでしたら、外来・病棟・当直バイトなどで「接点を持ち続ける」ということもできると思います。もちろん、経済的にも潤うので、一石二鳥ではないでしょうか。

「産業医のキャリアアップ」ってよく分からない…

産業医になったとして、「で、そこからキャリアアップするのってどうするの?」と思われるかもしれません。私自身、周りに産業医もいない状態でしたし、当時はネット上にも情報はほとんどありませんでしたので、皆目、検討もつきませんでした。

ですが、そもそも臨床医から産業医になろうという人がまだまだ少ない状態ですので、そうなりますと「産業医として経験年数を重ねる」ことでも十分キャリアとしてはプラスとなると思います。少なくとも、転職時のアピールとして「産業医として10年のキャリアがあります」ということはプラスに働くと思います。

また、プラスαで「労働衛生コンサルタント」の資格を取得する産業医は多いと思いますし、「資格系でキャリアアップを」とお考えだったら、ぜひ取得を目指すべきかな、と思います。

経済的な不安

産業医は臨床医と比べて「収入が低いんじゃないの?」と思われている方も多いと思います。「仕事は楽でも、収入が下がってしまうのは…」と思われるかもしれません。

実際、私も「勤務医は外来・病棟・当直・オンコール、さらには時間外の問い合わせや呼び出しも受けてるわけだろ。それに比べて産業医はそうした辛い部分はないわけだし、収入は激減するんじゃないか…」と思って心配でした。

ですが、リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアの転職エージェントに求人を紹介してもらったところ、その考えは誤りであると気づきました。

「勤務医平均」並には稼げます

以前の記事にも書いておりますが、勤務医の「常勤での給与+バイト代」の平均である「1461万円」は十分に稼げると思います。

「専攻医をドロップアウトして辞めた」後のキャリアとして「産業医になる」ことを選ぶ5つのメリット
新専門医制度が2018年より開始となり、「大学医局に在籍している方が有利」「資格取得の要件が難化・厳格化」しました。結果として、「ハイポな市中病院で後期研修をして、なんとなく専門医資格を取得する」ことが難しくなり、「はっきりと目的意識を持っ...

「週4日勤務+非常勤外来バイト1日」で、ほぼ勤務医並は稼げますし、条件の良い企業に経験を積んでから転職すれば、さらに上も目指せると思います。

「産業医では稼げない」というのは誤解であると思っています。しかも、「当直なし、オンコールなし、時間外の電話や呼び出しなし」といったQOLの良さのおまけ付きです。

産業医の給料事情

「産業医って、昇給はあるの?」という質問を受けることもありますが、これは企業によって千差万別です。

「入職時から同じ固定給」というところもありますし、あるいは「能力・業績によって昇給もある(またその逆で減給もある)」というところもあります。また、産業医から「統括産業医」として、いわば管理職に昇進して給料がアップするということもあったりします。

全国に支社・子会社がある某大手有名通信会社では、ブロックごとに産業医のリーダーがいて、そうなりますとかなりの昇給が望めるとも聞いたことがあります(ですが、入職時の給料は低め)。こうしたことを考えると、「本当、産業医って企業によって待遇が違うなぁ」という印象です。

昇給・昇進の有無などについては、求人票に書かれていたり、採用面接時に詳しい説明があったりしますので、ぜひしっかりと聞いておくことをおすすめします。

転職の難しさ

転職の難しさは、たしかに否定はできない部分です。特に「一社目の壁」はあり、企業としては産業医経験者の方を優先的に採用したいということはあると思います。

しかしながら、他の産業医が既に在籍していて、「未経験でも受け入れ可能」という企業もありますし、「経験がないと転職できない」ということでもありません。そもそも、未経験お断りの企業ばかりでしたら、産業医のいない企業が続出するのではないでしょうか。

この「転職のハードル」については、以下のような対策が行えると思われます。

転職活動の期間を「逆算」する

医師の転職が多いのは、4月>1月>10月の順となっています。それに伴って求人数も大きく動きますので、「入職月」から考えることはとても重要です。

つまりは、「4月入職を目指そう」ということでしたら、転職を余裕もって行うために6ヶ月ほど期間をとり、「10月から動き出そう」となるわけです。この逆算の考え方はぜひやっていただいた方がよろしいかと思います。

また、求人との出会いというのは「運」という側面も否めないため、想定より時間がかかってしまう可能性もあります。そのことも考え、ぜひ「在職中に転職活動を行う」ことを考えた方がいいです。

私は退職後に転職活動をするということになってしまい、経済的にも精神的にも心細い思いをしました…

「未経験」でも採用されやすい企業

求人を選ぶ際、「未経験」でも採用されやすい企業というのはあるので、以下のような点も考慮することをオススメします。

・複数の産業医やベテラン保健師が在籍していて、指導できる体制が整っている。

・企業側にマニュアルがあり、未経験であってもあまり問題がない(産業医に対しての期待値がさほど高くない)。

・都内中心部から離れていて人気エリア外、年収がやや低め(週4日勤務で年収1000万以下など)といった、条件面でやや難あり。

このような求人もぜひ検討していただき、積極的に応募してみることをオススメしたいと思います。やや希望条件から異なっていても、「次の転職で希望条件に近づける」ということも可能ですので、まずは「一社目の壁」を超えることを優先させることもお考えいただければと思います。

できるだけ手間を省く努力を

忙しい日々の勤務を続けながら、一方で転職活動を行うというのは本当に大変です。だからこそ、「省ける手間はできるだけ省く」ということが重要です。

自分でネット検索しまくって求人を探す、あるいはツテを探って求人を紹介してもらう。そして自分で応募し、採用面接にこぎつける…というのは、とてつもない手間です。

ぜひ、その点はリクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアの転職エージェントに相談し、「年収1200万円、週4日勤務、都内のこのエリアで産業医求人あります?」と希望条件を伝えて求人を紹介してもらい、応募から採用面接のフォロー、内定が出た後も交渉を代行してもらった方がよろしいかと思います。

私はこうしたことをせず、「産業医 求人」などと検索を繰り返してしまい、余計な時間や手間をかけてしまいました。この点はぜひ「餅は餅屋」にまかせてもらった方がいいと思います。

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