産業医になって「キャリア的に詰んでしまわないの?」という疑問に対する回答

産業医以外のドクターと話をしていると、意外な切り口での質問が飛び出したりして、私としては面白いと感じています。勤務医の知人から、産業医の「キャリア」について質問をされたことがあります。

そこで、「産業医になって、キャリア的に”詰んで”しまうことはないの?」ということを訊かれました。私も質問されて、一瞬「ん?どういうこと?」と思ったわけですが、質問をした彼に説明を聞いて、「なるほど、産業医のキャリアについて、そう思ってるわけね」と思った次第です。

産業医のキャリアパスって?

勤務医で言えば、専門医資格を取得し、知識や臨床経験を積んでいくことで、また医長などの管理職的な立場になったりするという「キャリアパス」は想像しやすいところだと思います。また、転職するにしても、專門医資格や経験年数などを評価してもらえる傾向にあります。

そのような勤務医としての分かりやすいキャリアパスがある程度、確立されている一方、産業医はそうはなっていない点を踏まえ、「産業医として企業に勤務していて、突然、その会社を辞めざるをえないということになって、次の転職ができなかったり、満足のいく転職ができない(=詰み)ようなことにはならないの?」ということを言いたいようです。

たしかに、産業医のキャリアパスはどうなのか、と言いますと、なかなかわかりにくいところです。産業医にも「専門医」制度はあり、「産業衛生専門医」はあるものの、産業医全員が現在のところ、目指すものにはなっていません。

労働衛生コンサルタントの資格も、取得する産業医は比較的多いとは思いますが、それでキャリアが大きく変わるかと言えば…という感じです。

分かりやすい「専門医資格」であったり、臨床経験の年数などの指標がなく、「産業医はキャリア的にどのように判断されているのか?」というところが疑問のコアとなる部分であるように私は思いました。

産業医の経験年数について

転職の際に感じることではありますが、産業医として勤務している、つまりは産業医の経験年数もまた、臨床経験同様にある程度は評価してもらえます。

もちろん、今までサボりにサボってきて、採用面接の場などで「今までどのような仕事に取り組んでこられましたか?」と質問されて、「えーっと…」と答えられないということでは話になりませんが(笑)

また、「メンタル不調者の対応」「生活習慣病をもつ社員への対応」など、それぞれの企業に「共通する課題」はあるもので、そのような課題にどのように今まで取り組んできたのか、というところは評価してもらえると思います。

また、産業医未経験よりも、産業医経験をある程度積んでいる医師の方が採用はされやすい傾向にあることからも、「産業医として勤務を続けている」ことの優位性はあり、産業医の経験年数もまた、全く評価されないということはないと思います。

専門医資格についても、そもそも産業医はまだまだ希少であり、そこまで他の産業医と差別化を図らなくても転職に困らない状況にはあると思います。もちろん、これからの産業医を取り巻く環境の変化によって、この状況も変わっていくかもしれませんが、「現状では詰んでしまう」ということは少ないのではないでしょうか。

「詰み」を避けるには

転職の際の採用面接対策の一環でもありますが、「今までどのような仕事をしてきましたか?」ということをしっかりまとめておき、説明できるという「キャリアの棚卸し」は重要なポイントです。

裏を返せば、「説明できるような仕事をしてこなくて、漫然と勤務してきた」ということだと困ってしまうわけです。それこそ「詰み」ということになってしまうわけです。

だからこそ、産業医として経験の浅い内であれば、先輩産業医が在籍していて相談できたり、あるいはその仕事ぶりを間近で見て刺激を受ける、ということは大事なことだと思います。

そうした産業医求人もありますので、もし「これから産業医に転職を考えている」ということでしたら、リクルートドクターズキャリア[PR]などの転職エージェントにご相談いただき、求人選びのサポートをしていただいてはいかがでしょうか。

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