私は後期研修医時代、「早く開業したい」と考えていました。その頃の私は、勤務医としての働き方に疲弊してしまっており、「早く勤務医を辞めたい」とばかり思っていました。その逃げ道として「専門医資格を取得したら、すぐに退職して開業する」と考えていたわけです。
ところが、クリニックで外来バイトをしてみたところ、決して「甘くはない」と思い知らされました。
病院の専門科外来とは異なり、「内科一般」を診療する必要がありますし、皮膚科、泌尿器科領域も一部ではありますが診療する必要があります。診療の合間にワクチン接種、発熱外来の対応もあり、病院での外来診療よりも大変だとわかったわけです。
さらに、外来バイトとは異なり、開業すれば経営や、看護師・事務スタッフのマネジメントなどの人事労務管理も必要になります。バイトを通じてですが、「経験してみないと実情は分からない」ということが改めて分かりました。
産業医はどう「おためし」するのか
では、産業医の仕事はどうでしょうか。初期研修医の頃に「企業で研修」をすることも普通はできない(一部の病院では、選択できるそうですが)でしょう。
さらに、産業医の知人や先輩が周りにいれば「話を聞かせてもらう」「見学をさせてもらう」なんてことができるかもしれませんが、少なくとも私は周りにそのような人はおりませんでした。
今ではSNS上で産業医にコンタクトをとることもできるでしょうが、そうしたやりとりで果たして「産業医の仕事」を捉えることはできるのか…私は古い人間なのか、ちょっと疑問です。
だからと言って、「じゃあ、産業医を経験するために、今の病院を辞めて転職してみるか」なんてことをする人はいないでしょう。産業医の「経験」をするにはどうしたらいいのか、という問題があります。
「おためし」の二つの方法
もし現在、認定産業医の資格がないということでしたら、まずは迷うよりも前に50単位を取得するために産業医科大学などの集中講座を受けられることをお勧めします。
第一線で活躍する産業医などが講師として登壇されるでしょうから、その話を聞いてみて、産業医の仕事をある程度は疑似体験できると思います。この講義を聞いてみて、「全く興味持てなかったな」ということであれば、産業医になることは考え直した方がよろしいかもしれません。
もし、すでに認定産業医の資格を持っていて、常勤産業医への転職を迷っておられるということでしたら、嘱託産業医のバイトをしてみることもよろしいのではないかと思います。求人については、臨床バイトに比べてみればやはり少なめですが、リクルートドクターズキャリア[PR]や、マイナビDOCTOR[PR]などの求人紹介会社に相談しておけば紹介してもらえます。
嘱託産業医であれば常勤産業医よりも「経験を問わず」というところも多く採用されやすいということもありますし、また常勤産業医の転職の際、「嘱託産業医の経験がある」ということで評価してもらえる企業もあります。そのため、「お試しもできるし、経験も積める」と一石二鳥な方法であるので、お勧めです。