産業医科大学では、「産業医学基本講座」を開催しています。こちら、本来は産業医科大の卒業生を対象としていますが、他大学卒業の方も受講が可能です。
こちらの講座を全て修了しますと、「産業医学基本講座修了認定書(産業医科大学産業医学ディプロマ)」が授与されます。「ディプロマ」とは、卒業証明書や業績証明書という意味であり、修了した証がもらえるということですね。
最近、「産業医科大学産業医学ディプロマ」を授与される見込みという方が、「これで産業医として働ける」「更新も不要」とツイートされており、「え?そうなの?認定産業医の申請っていらないんだっけ?」と私自身も思ったため、今回調べてみました。
産業医の要件とは
そもそも産業医の要件としては、「医師」でありなおかつ以下のいずれかに該当していることとされています(労働安全衛生規則第14条の2)。
1) 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者が行うものを修了した者
2) 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修した者
3) 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
4) 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る)の職にあり、又はあった者
5) その他厚生労働大臣が定める者
というわけであり、このいずれかに該当すればいいわけです。
現実的には、「認定産業医」になって産業医資格を得るという方が大半であると思います。その他、かなり少ないですが、労働衛生コンサルタント資格を取得して産業医になるという方もおられます。
産業医学基本講座修了により認められるもの
医師でありなおかつ産業医学基本講座を修了しますと、「1) 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者が行うものを修了した者」に認定されます。
つまりは、このディプロマをもってして、「産業医」として働くことができるというわけですね。産業医学基本講座修了=産業医の要件を満たす、ということが言えるわけです。
ちなみに、日本医師会認定産業医への申請も、この講座修了によって行うことができます(修了認定の日から5年以内1回のみ申請が可能)。履歴書等にも「認定産業医」は記載できるので、申請しておいた方が得、と思われる方もおられるでしょうね。
なお、修了した医師・歯科医師は、「労働衛生コンサルタント(保健衛生)試験」の筆記試験が免除されますので、口述試験さえパスすれば合格することができます。
更新は不要?
講座は一度受講・修了してしまえば、「その資格を更新する必要がある」なんてことはなく、認定産業医とは異なって「更新不要」と言うことができます。
ちなみに、「認定産業医」の資格は5年に1度の更新制ですが、こちらはあくまでも日本医師会認定産業医の資格であり、厚労省の認可する産業医資格までもが喪失してしまう、というわけではありません。
よって、産業医として働く上では別に認定産業医の資格を更新する必要はありません。ですが、労働基準監督署に選任届を行う際には、「医師免許の写し及び産業医の資格を証する書面を添付」するため、やはり日医認定産業医証を提出することが必要になってきます。そこにはやはり「有効年月日」が記載されているので、企業側が期限切れを気にするということがあるかもしれません。
受講料やスケジュールは?
産業医学基本講座に受講料やカリキュラムが掲載されていますが、正直驚きました。
・産業医科大学開催:21万円
・東京開催 50万円
「産業医学基礎研修会集中講座」は11万円、東京で行われる「産業医学基礎研修会 東京集中講座」は15万円ですから、かなりの差がありますね。
スケジュールは月~土まで講座・研修があり、しかも90分の講座が5コマあります。これが25日間あります。これなら受講料も納得かもしれませんね(東京開催分は、もう少しバラけていて、日数が増えています)。
正直、「大学生時代ならいざ知らず、社会人になってから、これはキツイ…」と思ってしまいました。コスパで言えば、「産業医学基礎研修会集中講座」「産業医学基礎研修会 東京集中講座」の方が良さそうです。
もちろん、本気で産業医やるならぜひ受けた方がいいでしょうが、「産業医の資格だけ欲しい」という方が安易に手を出していいシロモノではないというのはおわかりいただけるかと思います。