「会社や会社員のこと、全然分からないけど産業医になって大丈夫?」という質問に産業医が答えてみる

知人の医師から、「俺は会社勤めもしたことはないし、会社員の家庭で育ったわけでもない。そんな会社や会社員のことが産業医になっても大丈夫なのか?やっていけると思う?」と質問をされました。

この点、私も会社勤めをしたこともなく、また両親とも会社員ではなかったので質問した医師と同じ条件だと思います。そんな私も、もはや10年近く産業医として勤務できておりますし、自信をもって「できます!」と言えます。

もちろん素養のあるなしでもなく、入職後に学ぶ機会があり、自然と身についていくという意味です。

私は一社目は製造業、二社目は金融業、三社目は不動産業の会社に産業医として勤務しています。もちろん、それぞれの業界に明るかったから入職したわけでもなく、「入った会社がその業界だった」というだけです。

その後、私は色んな課の方たちと「面談」をしているわけですが、その中で徐々にそれぞれの部署がどのような仕事をしていて、どのような大変さがあるのかを知り、1年、2年と面談を続ける内に「会社」への理解を深めていきました。

ですので、いわば「面談にきた社員さんが家庭教師」であると言えます。注意点としては、面談で話をいい加減に聞いていたり、「分からないのに知ったかぶりをする」といつまで経っても理解は深まらないと思いますので、しっかりと「それどういう意味ですか?」「ここが分からないので教えてください」と言う勇気は持っていた方がいいと思います。

面談で社員の業務内容について「知ったかぶり」はしない方がいいと思う理由【産業医マニュアル】
常勤産業医として、新たな業種の会社に入職しますと、社員との面談の中で出てくる「業務の話」がまるっきりチンプンカンプンなことがよくあると思います。 私が一社目に産業医として入った会社は自動車関連の部品を製造する会社でしたが、元々、車にあまり興...

また、面談自体に「会社員とあんまり接点がないけど、面談なんかできるの?」と思うかもしれませんが、社員さんの悩みも「業務量が多いことへの悩み」「上司・部下における人間関係の悩み」「管理職の抱える悩み」など、医者であろうとも経験する悩みもあり、共感できる部分は多いと思います。

これに加えて、私は転職経験も多いため、「社風が合わない」「思っていた会社と違った」といった中途入社の社員さんの悩みにも共感できる部分が多いです。
産業医面談を行う上で「転職経験」「仕事上の悩み」「自分の病気体験」を語ることは有効だと思う理由【産業医マニュアル】
社員さんと面談を行う上で、社員さんもどこかで「どうせ、お医者様には分かるまい」「つまずくこともない人生なんでしょうよ」「私の辛さを分かるわけないさ」と思っている節があるな、と感じることがありました。 もちろんそれは誤解であり、私も3度の転職...

また、中には対応に苦慮するような大変な社員さんもいますが、そのような時は、一人で抱え込まずに人事と相談しつつ対応していくといったことを行えば問題ないでしょうし、この点も産業医として経験を積めば問題なく対処できると思います。

産業医面談で「困った社員」「個性的な社員」に対応する上での心得
産業医面談をしていると、少なからず「困った社員」「個性的な社員」に対応せざるを得ないことがあります。そのとき、どのように対応すべきかについて書いてみたいと思います。 もちろん、全てにおいて対応できるとは思いませんが、「手数の内の1つ」「心得...

以上です。
産業医になろうかと考えていて、「会社や会社員のこと、全然分からないけど…」と心配されておられる先生の少しでも懸念が払拭できれば幸いです。

また、入職する上で「まるっきりその会社のことを知らないと不安…」ということであれば、リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアなどの転職エージェントに相談していれば面談前に情報を教えてくれますので、お問い合わせいただいてはいかがでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました