社員さんで、内心「休職したい」と思っていて産業医面談に来られる方もおられます。ただ、いきなり言い出すことはできず、「今、上司と上手くいってなくて…」「叱責されることも多く、眠れなくて…」といった話をした後に「実は、少し休みたいと考えています」とおっしゃる方が多いように思います。
その一方で、中にはいきなり「休職したいんですが」と切り出す方もいます。ただ、私としてはそれは避けるべきだと思っております。
今回は、その理由と上手く産業医面談を利用する方法について書いてみたいと思います。「体調不良を自覚していて、産業医面談を受けてみたい」と思われている方にご参考になれば幸いです。
「休職したい」といきなり切り出すべきでない理由
私が中学生の頃、発熱があって咳、痰の症状がみられていたため、近所の内科クリニックに行ったことがありました。そこでつい、「風邪だと思うんですが…」と切り出したところ、医師はやや不機嫌そうに「それを判断するのは私だから」と言いました。
今思えば分かるのですが、「発熱、咳などの症状=風邪」というわけではなく、他にも可能性のある疾患はあります。そのような判断をするのは医師、というのはまっとうな意見だと思います(中学生相手にあまりに冷たい物言いではないか、という側面はこの歳、置いておきますが)。
産業医の中には、いきなり「休職したいんですけど」と言い出す社員さんがいたとしたら、「それ判断するのは私だから」とムッとする方もおられるかもしれません。
ですので、いきなり「休職したい」と切り出すのではなく、「眠れないという症状が続いており、最近では夜中や早朝に目が覚めてしまいます」といった困った症状などについて「まずは相談」することをオススメしたいと思います。
産業医面談を上手く活用するために
産業医面談で、メンタル疾患を疑って話を聞く場合、以下のようなポイントを整理していくことが多いように思います。
・最近、仕事上でどのようなことに困っているか(パフォーマンスが低下して業務が上手く回らない、判断力が低下している、どこから手をつけていいか分からない、朝起きることができず遅刻気味…など)。
・気になっている症状はあるか。また、その症状はどのような経過を辿っているか。
・不眠症状、抑うつ気分、食欲低下などメンタル疾患を疑わせるような症状はあるか。
・ストレスの要因となっていることはどのようなことか。また、そうした原因にどのように対処してきたか。
こうしたことを、メモとしてあらかじめ書き出してまとめておくと、面談でスムーズに話をすることができると思います。面談時間も限られたものですので、まとめておいてもらえると、産業医としても助かります。
面談の結果、産業医としてはいきなり「休みましょう」と提案するよりは、「まずはメンタルクリニックを受診してみましょう」と言うことの方が多いと思います。
ただ、その通院までの期間も耐えられないということでしたら、「予約し、受診したいと思います。ただ、実際に受診できるまで待つことも多いと聞きます。それまでの間、自分としては勤務できる自信がありません。主治医の診断書は改めてとりつけますので、産業医としての意見書を書いていただけませんか?」と交渉することもできると思います。
以上の流れをまとめますと、「休職したい」といった希望がある場合、
1) 症状や仕事上で困っていることの経過や、ストレスの要因について面談前にまとめておき、産業医に相談する。
2) メンタルクリニックへの受診について提案されたら、まずは受け入れた上で、「休職を要する」といった内容の「産業医意見書」を書いてもらえないかと交渉する。
3) 休職に入り、メンタルクリニックを予約・受診した上で主治医の診断書を取り付ける。
といったステップを踏めば休職することは可能だと思います。