社員と企業、それぞれの一方的な言い分だけを鵜呑みにすべきではありません【産業医マニュアル】

社員の面談をしていますと、そこで語られる窮状や仕事・人間関係の辛さに、つい同情してしまうことがあります。

もちろん、共感・傾聴は面談の基本なので、その姿勢は大切であるとは思いますが、ただ一方的にその主張を鵜呑みにしてしまうのは危険です。

当然、そこで語られるのは社員の側の主張であり、社員側にとって都合のいい話しか語られていない可能性があります。

よって、客観的に見ると事実とは異なる場合があるわけです。「いくら仕事を頑張っても、不当に評価を下げられてしまう」と涙ながらに語っていても、実際のところ全くと言っていいほど戦力になっておらず、同僚が仕事を肩代わりしている。さらには「仕事が終わらないにも関わらず、同僚に仕事を押し付けたままさっさと自分は帰ってしまう」というケースもあったりします。

こうしたケースでは、やはり同僚による風当たりも強くなり、本人も職場に居づらくなってしまいます。ただ、そのことを認めるということは、自分の業務遂行能力の欠如を認めることになるため、決して本人は実際の職場の様子を語りはしません。

産業医として経験を積んでいますと、「なんかおかしいぞ。本当はこれ、本人に問題があるケースではないか?」と分かったりしますが、経験が浅いと「この上司はヒドイ!」などとすっかりと”騙されてしまう”こともあります。

しっかりと上司や人事側の意見も聞き、できるだけ公平・中立に事実を捉え、その上でどうすべきかを考えるべきです。結果、社員に苦言を呈することになるかもしれませんが、それも必要であれば行いましょう。

患者さんも、実際はヘビースモーカーであっても、外来受診時には「タバコ、吸ってません」とウソをつくこともあります。患者さんも、そして社員も常に真実ばかりを語るものではないということは肝に銘じておくべきですね。

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