産業医として勤務しておりますと、面談で明らかに「なんでこんな意味がない面談なんか受けなきゃいけないんだよ」といった態度の方、あるいは「さっさと終わらせてよ」といった態度の方に遭遇することもあります。
特に長時間勤務者面談ですと、元々忙しい方で、なおかつ「健康だし、医者の話なんか聞かなくても大丈夫」といった方が来られますので、なおさら「意味ない。早く終わらせて仕事に戻らせてよ」といった空気をありありと感じることもあります。
ですが、それですとせっかくの面談時間がもったいないと思うのです。そこで今回は、産業医と少なからず接点の方々に、「産業医を上手く活用する方法」についてお知らせしたいと思います。
面談を「セルフチェック」の場として活用
自分では「別に問題ない」と思っている状態でも、実は仕事で無理をして体調を崩しかけているといったこともあります。
産業医の面談で、
・最近、眠れていますか?睡眠の質はどうでしょうか。
・寝付きが悪かったり、途中で起きてしまったり、早朝に起きてしまうようなことはありませんか?
・寝酒を飲まないと眠れないということはありませんか?飲酒の量は増えていませんか?
・食事はしっかりとれていますか?食欲がなかったり、あるいは逆に過食の傾向はありませんか?
・土日、休めていますか?気分が落ち込んでしまい、なかなか気持ちを切りかえることができないといったことはありませんか?
といったことを質問されることもあると思います。こうした質問を自分自身に問いかけ、「セルフチェック」を行うことも産業医面談の大事な側面です。
また、こうした質問を覚えておきますと、「あれ?最近ちょっと夜中に目を覚ましてしまっているな」といった場面で、ストレスを強く抱えてしまっている状態に気づくことができるかもしれませんよ。
職場の問題点を会社へ「フィードバック」する場としての活用
職場の問題点や改善すべき点を、「どこに言ったらいいんだろう」と迷うこともあるかもしれません。そうした時、産業医面談があったら「実は職場でこうした問題がありまして…」「休職者が立て続けに出たのは、こうした事情があって…」などと話すと、産業医を通して人事に伝えてもらうこともできたりします。
こうした現場の生の声は、産業医としても職場改善の意味で非常に助かります。ですので、もし問題点を認識されているということでしたら、産業医面談の場でぜひお話いただけると幸いです。
「上司には伝えづらいけど、人事には匿名で伝えて欲しい」といったことも可能ですので、そうした依頼をしていただくの結構だと思います。
「顔合わせ」を行って相談しやすくする機会
どういう人か分からない人に「いざ相談」となると、なかなか難しいものです。面談で一度でも話をしたことがあったりしますと、「相談しやすい」と感じることもあると思います。
つまりは、もし「メンタル疾患で休職・復職する」「病気や怪我を抱えたまま仕事をするため、就業上の制限をかけてもらう相談をしたい」「日頃の業務の中で、産業医に意見を求めたい」といった場面で、いわば本格的に産業医面談を必要とする場面の時のために、「顔合わせ」的な役割として面談を利用して、「ああ、こんな人なんだ」と思っていただくこともできるかな、と思います。
以上です。
上記のようなことで、「産業医なんて役に立たない」「産業医面談なんか意味がない」と思わず、ぜひ「上手く活用してやろう」と思っていただけますと幸いです。