上司がメンタル疾患を抱える部下を「仮病を使っている」と決めつけてしまうことの危険性【産業医マニュアル】

管理職の方から、「仮病をつかっている部下がいる。なんとかして欲しい」と相談を受けました。産業医としては、実際に会って話をしないとなんとも判断しようがないと伝えた上で、実際にその部下である社員と面談を行うことになりました。

話を聞くと、業務負荷がかなり高くなっていた2ヶ月ほどを経て、不眠症状や抑うつ症状、頭痛やめまいといった症状が出ていることが明らかになりました。その上、心療内科に通院して「適応障害」と診断されて睡眠導入剤を処方されている…ということが分かり、「詐病の疑いは低いと思います」と上司に報告しました。

どうやらこの上司、「業務負荷が高くなっていた時期」の後に着任したようで、大変だった時期のこの部下を見てはいなかったようです。

さらには、「ちょくちょくもっともらしい理由をつけて休む」「月曜に遅刻や休みが多い」「注意すると、言い訳やその場しのぎの弁解をしてくる」などといったことから、「仮病に違いない」と思ったようです。

しかしながら、面談の中で話していただいた内容は、あまり詐病を疑うようなポイントはなく、矛盾のない経過や症状でした。ただ、上司としては「仮病を使っている」と思い込んでしまっていたため、注意や叱責も増え、部下はさらにストレスを抱えてしまっていました。

今回は上司の方から産業医に相談をしてくれたからよかったものの、「仮病に違いない」という判断の下、このままさらに部下が追い詰められていたら…と思うと、やはり恐ろしいです。この点、管理職研修などでぜひ強調して言った方がいいな、と思った次第です。

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