企業が産業医に求める「役割」には段階があると言われています。こうした「役割段階」を見極めて、産業医が業務にあたることは処世術として非常に大事だと思っています。
企業側の要望をなんでも鵜呑みにしろというわけではありませんが、企業に雇われている以上、そのニーズを満たすということはやはり産業医として意識はすべきであると思います。
そこで今回は、産業医の処世術の一環として、「役割段階」を意識することの重要性について書いてみたいと思います。
そもそも産業医の「役割段階」とは?
産業医の企業における役割を階層(レベル)に分けたものが「役割段階」となります。具体的には、「最低限」となる第一段階としては、「法定業務」があり、安全衛生委員会への出席、健康診断の就業上判定といった法律で定められている業務となります。
次に、第二段階としては「個別ケース対応」であり、社員の体調不良者、メンタル不調者などについて、医療機関・現場上司・人事などの関係各所と連携する、就業上の意見を行うといった業務がこの段階として挙げられます。この第二段階まで対処できれば、産業医ビギナーとしては合格点といったところでしょうか。
第三段階ともなりますと、ビギナー産業医から脱して一気に中級レベルとなります。業務内容としては、休職~復職のプロセス、健康経営の推進といったいわゆる「システム構築」といったことを行います。
第四段階ではさらに高度な、「産業保健部門の管理」を行うことになり、所属職場の産業保健業務自体をマネジメントするといった、いわゆる「統括産業医」としての役割を担うことになります。
そして最終的な第六段階では、産業保健の枠を超えた「企業価値を高める」といった活動への参画が求められるといったことになります。
産業医の「役割段階」と企業のニーズ
さて、産業医にはこうした「役割段階」があるわけですが、全ての企業が「第六段階までよろしくお願いします」と言うかどうかと言いますと、そのようなことはありません。
たとえば、嘱託産業医で「月イチ訪問」を行うような事業所では、「第一段階、つまりは最低限の法定業務だけお願い」というところもあり、そこの安全衛生委員会で、産業医が「企業価値を高めるためには…」と第六段階のようなことを提案し始めたらどうでしょうか?
やはり企業側のニーズというのはそれぞれ異なり、「ウチは第二段階までお願い」「ウチは産業医の先生に期待しているところが大きいので、第三段階までお願いします」といった違いがあります。
つまりは、すべからく「段階が高ければいいはず」「産業医は全企業で第六段階まで意識すべき」なんてことはないわけです。産業医としては、「企業ニーズとのマッチング」が重要であり、「ここの会社はどこまでを求めているのかな?」ということを見極める必要があります。
産業医と企業のマッチング
私の場合、未経験で入職した一社目が産業医への期待値がかなり高めのところで、第三段階以降も求められているようなところでした。
しかしながら、知識や経験もなく、頼れる先輩産業医もいなかったため、ニーズを満たすことができませんでした。やはりそうなりますと「お役御免」となり、3年目を迎える前に契約打ち切りとなりました。
また、入職後の「居心地の良し悪し」といったところも、人間関係もさることながら期待値がかなり関係しています。実際、私は三社目の現在、今の勤務先が非常に働きやすいと感じています。
もし産業医として入職して「合わないなぁ」とお感じということでしたら、こうした期待値・企業側のニーズというところを見直した上で転職をしてみるのはいかがでしょうか。リクルートドクターズキャリア[PR]などの転職エージェントであれば、求人選びの段階からこうした相談に乗ってもらえますので、おすすめできると思います。