「臨床医に向いていないのでは」と悩んでいる時にチェックしておくべき7つのポイント

私は後期研修医時代、「自分は臨床医に向いていないのでは…」と悩んだりするどころか、所属していた科の医長に、面と向かって「君は臨床医に向いていない。臨床以外の道を考えた方がいい」とハッキリと言われました。

そのことを冷静かつ客観的に振り返りますと、「いくら可愛くない部下に対しても、そんなことよく言えたよな」と思いますが、当時は曲がりなりにも「後期研修を続けた先に専門医資格を取得して…」と思っていたため、かなりのショックを受けていました。

今、「臨床医に向いていないのでは…」と悩んでおられる真っ只中の方も、傷つき、ショックを受けておられるのではないでしょうか。そこで今回は、そんな悩みを抱えておられる時に、チェックしておくべきことについて書いてみたいと思います。

得意なこと、不得意なことを「言語化」してみる

漠然と「自分は臨床のセンスがないんだ…」などと思っていますと、「自分は何も臨床のことはできないんだ」などと考えてしまいがちです。

ですが、それぞれ得意なこと、不得意なことはあるはずで、そのことを具体的に「言語化」してみることは重要なことだと思います。

たとえば「当直などの急患対応など、瞬発力が必要な場面が苦手」というドクターでも、「外来など、じっくり患者さんと向き合い、話に耳を傾けて診断・治療を行う」ということが得意な方もいると思います。

実際、私も初期研修の時に循環器内科をローテして、急患に対してドクターが大勢集まって自分から仕事を見つけてテキパキ動くなんていうことが非常に苦手でした。ですが、当然のことながら日々の業務ではそのような場面ばかりではないわけで、そのような急患対応が苦手であれば、それ以外の得意な場面で活躍すればいい、と思っておくことは重要なことだと思います。

得意なこと、不得意なことをあらかじめ言語化して認識しておくだけでも、大分楽になれるのではないでしょうか。

「努力」で改善が可能なのかの判断

勤務医として働く上で、「それは苦手なのでできません」ということばかりではなかなか立ち行かなくなってしまいます。「急患対応は苦手なので、担当している患者さんの急変時の対応はしません、当直もイヤです」なんてことはなかなか言いにくいところです。

そのため、苦手なことでもある程度は対応していかなければいけないということになります。それが果たして、「努力」でなんとかなることなのかどうかというところは考えておく必要があると思います。

たとえば、判断における瞬発力はないとしても、その点を知識や経験でカバーして、「こうした場面ではこうする」ということができるのかということです。それすらも難しい、努力で改善が難しいレベルということだったら、それはやはり「臨床以外の道」を探ることを検討する必要が出てくるのではないでしょうか。

私の場合、「時間外の問い合わせ・呼び出し、当直やオンコール」などが非常に苦手で耐えられませんでした。こうした働き方に努力して自分自身を合わせられるか…ということは難しいと思います。

所属している科と自分のミスマッチはないか

所属している科があまりにも多忙で、心身に負荷がかかり過ぎていて耐えられないというケースもあると思います。

専攻医(後期研修医)のキャリアチェンジでよくある「やりたいこと」と「できること」のズレ
初期研修を終え、「さて、これから専門医を目指すぞ」ということで専攻医(後期研修医)になったものの、途中で挫折するということはあまり珍しくありません。 たとえば、外科系を選択したものの「体力的に厳しくて…」「激務に耐えられなくて…」といったこ...

にも書きましたが、やはり「やりたいこと」と「できること」のズレというのはどうしてもあるもので、いくら興味・関心のある科で働きたいとしても、体力や向き不向きの問題でミスマッチを起こしてしまっている可能性もあります。

つまりは、「臨床医が向いていない」のではなく、「その科に合っていない」可能性です。その場合は、やはり「転科して出直し」を考えた方がいいと思われます。

「今働いている職場環境」に上手く適応できていないだけでは

私も初期研修と後期研修を同じ病院で、地続きのように選んでいたため、「他の病院がどうなのか」というのを丸っきり知らずにいました。

ですので、「今いる病院と他の病院も同じなんだろう」と思い込んでしまっていました。ところが一歩その病院の外に出れば、様々な環境、就労条件、人間関係があるわけで、「今の職場に上手く適応できていないけど、他のところにいけば上手くいく」可能性もあるわけです。

この場合も、「今の職場」に向いていないだけで、臨床医が向いていないわけではなく、「上司と反りが合わない」「働く環境が自分に向いていない」というだけの可能性もあります。この場合、転職することによって上手くいく可能性もあると思います。

周りにいる先輩や同僚医師と比較している

周りにいる先輩や同僚医師と比較して、「自分はダメだ…」と思い込んでいるケースもあります。

周りの同僚医師の「当然」が「当然ではなかった」自分【医師転職】
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にも書きましたが、「同僚や先輩医師と同じようにできない=自分はダメなんだ」と思い込んでしまうこともよくあることだと思います。ですが、「周りの同僚医師の当然」が当然ではない、耐えられない医師というのは私を含めて一定数います。

ですが、この場合も上記同様、「他の環境なら上手く適応して、臨床医を続けることができる」可能性もあります。だからこそ、「他の病院で働く」経験をしてみることも、考え方を変えられるきっかけにもなると思います。

「当たり前」のレベルが高くなっていませんか

「医師たるもの、日々の業務に加え、急患対応や当直、オンコール対応をこなせて当然」「院内や関連病院にいるドクターとの人間関係、縦社会に順応できて当然」「事務員や看護師、コメディカルなどと上手くやっていける人当たりの良さ、器用さがあって当然」…など、臨床医を続ける上で「当たり前」のレベルが非常に高くなっている人もいると思っています。

これらは

「自分は臨床医に向いていない」と自覚した、不幸な臨床医のとりうる選択肢とは
臨床医時代に、私は医長から「君は臨床医に向いていない」と宣告されたことがありました。 その言葉だけですとパワハラめいた感じもしてしまいますが、そうではなく、私が仕事上でいくつかのしくじりをしてしまった、医長も「腹に据えかねた」一言であると思...

にも書いておりますが、実際には「当直・オンコールはしたくない、残業や時間外での勤務は絶対にしたくない」「人間関係は苦手。できるだけ接点を持ちたくない」という人も、私を含めて中にはいます。

そんな人でも、たとえば「当直なし、オンコールなし、土日祝日フリー」で働ける求人は多くありますし、全ての人と上手く関係を築いてやっていく必要も実際にはなかったりします。

「当たり前」のレベルが高すぎるが故に、「自分は臨床医に向いていないのでは…」と思ってしまっている可能性もありますので、ここらへんは就労条件を下げることによって対応できることもあるとは頭の片隅にでも置いていただけますと幸いです。

「臨床以外の道もある」と知っておくことも重要

ストレスフルな勤務状況にある中で、「いざとなったら転職できる」という逃げ場があるのはとても助けになります。

それと同様に、「本当に臨床医が向いていないと思ったら、その時は臨床以外の道に進めばいい」と思っておくのもいいことなのではないかと思っています。

臨床医が「臨床医を辞める」選択をしづらい理由【産業医転職】
私自身も、後期研修中に臨床医から産業医へと転職しているわけですが、「臨床医を辞める」という選択をとる上で、とても躊躇したことを覚えています。 なぜ躊躇したかと言えば、「未知の世界に飛び込む」という心配や恐怖といった部分も大きかったですが、そ...

のように、臨床以外の道についてはあまり大学でも教えられてこなかったですし、あるいは周囲に相談できる人が乏しいということもあって、なかなか臨床以外の道については情報が入ってこないということもあります。

ちなみに、私の場合は医長から言われたということもありますが、初期研修医どころか学生時代に

「臨床医が向いていない医師」はそのことを学生時代・初期研修で薄々自覚している説【医師転職】
「臨床医が向いていない医師」というのは実は一定数存在し、「産業医などの臨床医以外の別の道を歩む」以外にも、実は「自覚しつつも臨床医を続けている」という方が結構多いのではないかと思っています。 やはり医師になった方は真面目な方が多く、「医師た...

このように「臨床、向いてないのでは…」と薄々思っておりました。そのような方は、ある程度のところで「臨床、向いてないな」と見切りをつけて別の道を探すことも大事ではないかと思っております。

ただ、「当直・オンコールが多すぎて…」「残業が多すぎて…」「上司と反りが合わなくて…」といった悩みを抱えているということでしたら、臨床医を続けながらも、自分に合った場所を探すために転職をするということもできます。一方で、「もう臨床医は無理だ…」ということでしたら、産業医に転職するということも一つの選択肢だと思います。

いずれにせよ、もし「自分に合った求人を紹介してもらいたい」ということでしたら、リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアの転職エージェントに相談をすれば教えてもらえますので、まずは相談をしてみることをオススメします。ドクターは無料でご利用いただけますので、ご気軽にお問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。

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