初期研修をドロップアウトして産業医を目指すべきではない3つの理由

初期研修の段階で「臨床に興味がもてない」「勤務医として働くのがほとほとイヤになった」ということで、産業医を目指そうと思われるという方もおられるようです。

私自身、初期研修の段階で同様の心境となり、勤務医として働く期間をできるだけ短くして「開業してやるんだ!」とずっと思っていました。だからこそ、「気持ちは分かる」のですが、絶対にやめておいた方がいいと思います。

その理由について、今回の記事では3つに大きく分けてご説明したいと思います。

「初期研修」ドロップアウトのデメリットが大きすぎる

私自身も後期研修でドロップアウトした身ではありますので、偉そうなことは言えませんが

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それでも「初期研修でのドロップアウト」はデメリットが大きすぎると思います。

転職しようにも初期研修すら修了していない医師を雇おうという病院は、かなり数が限られていると思います。また、バイトしようにも同様で求人紹介会社も、紹介するのに二の足を踏むと思います。

「いざとなったら転職できる、バイトができる」というのは非常に大きく、万が一産業医としての職を失っても「しばらくは食いつなげる」ということはとても大事です。

稀に「起業するから初期研修は別に修了しなくていいや」なんて人もいますが、それも大間違いだと思います。その起業が確実に成功するならいいですが、「万が一、上手くいかなかった場合」を考えて、医師として働けるようにはしておくことは大切なことではないでしょうか。

バイトのことで言えば、できれば専攻医になって「一人で外来を担当できる、当直をなんとかこなせる」レベルにはなっていた方がいいと思います。外来バイト、当直バイトができるのはバイトの幅、求人の幅を広げる上でとても重要です。

そもそも産業医として就職できるのか?

認定産業医になるのに、たしかに「初期研修を修了していること」といった規定はないと思います(初期研修中でも認定産業医にはなれる)。ですが、産業医として就職することを考えると、やはりそれは別問題です。

産業医の採用では、たいてい書類審査→一次面接→二次(最終)面接を突破しなければなりません。その中で、経歴や人柄など、十分に精査されます。

となりますと、「初期研修を修了していない」ということがどれほど大きなデメリットになるかおわかりいただけると思います。

企業の中には、「臨床○年以上、産業医経験○年以上」と経験年数を指定するようなところもあります。特に書類審査で「臨床経験を評価する」という企業も少なからず存在すると思います。

あと、あまり若くして産業医になると、年上の社員さんたちに簡単に言えば「舐められる」こともあると思います。その点からしても、やはりある程度の年齢になってから産業医になる方が私としてはいいかな、と思っています。

産業医の適性の問題

臨床医に向いていないからと言って、産業医に向いているとは限りません。そこはやはり産業医に向いているのか、その適性の問題になると思います。

もし苦労して産業医になって働いたとして、「うわ、やっぱり向いてないわ」と思った場合、どうするのでしょうか。ドロッポ医になろうにも、上記の理由でバイト求人もかなり限定されます。

では、「しょうがない、また初期研修をやり直すか」と思ったとした場合、かなりの遠回りになってしまうと思います。だからこそ、「まずは何がなんでも初期研修は修了する」ことは検討すべきだと思います。

以上です。
私としては、初期研修を修了し、できれば専攻医になってみた上で、「やっぱり産業医になろうかな」と思うようであれば、転職することを勧めたいと思っております。一見、遠回りかと思うかもしれませんが、そうした臨床経験が産業医としての業務に活きていますし、また、対応可能なバイトを増やしてもらえたことがやはりプラスになっています。

ですので、専攻医まで進んでみて、そこから産業医の道を検討する、ということでしたら、リクルートドクターズキャリア[PR]などの転職エージェントに求人紹介を受けてみてはいかがでしょうか。

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