専攻医が産業医になる上で「今までの苦労がムダだった」と思うべきではない3つの理由

臨床医、特に勤務医のドクターは専攻医→専門医取得した後、臨床経験を積んで卒後20年以降に「臨床医としてのピーク」がくると言われています。着実にスキルアップをしていったその先に、ピークがくるという形でしょうか。

理由は様々ですが、その「ピークを迎える前」の段階で臨床医をドロップアウトするドクターもいます。実際、私は後期研修医の時、早々にドロップアウトしておりますので、専門医資格も取得できていません。

私自身、「もうちょっと我慢してれば専門医になることができたんじゃないか」「今までの苦労はムダだったんじゃないか」などと思うこともありましたが、今、振り返ってみるとそうでもないことが分かります。

面談する上で意外に必要な「臨床力」

産業医として、様々な社員さんたちと面談をすることがあります。健康上の問題について相談に来る人、メンタル不調で相談に来る人、癌治療をしながら働くことについて相談に来る人など、多岐に渡ります。

こうした相談を受ける上で、鑑別診断を頭の中でしつつ「それだったら○○科で相談した方がいいですね。それで何もなければ△△科に相談するのもいいかもしれません」などとアドバイスをすることもあります。加えて、様々な科の疾患を抱える方と話をする時は、意外と初期研修でローテした科のことが役立っていることもあります。

実際に診断・治療をすることはありませんが、話を整理して、問題点を抽出し、解決策をどうしたらいいのか、どうすれば社員さんを改善に導けるのか、というところでは意外とですが、産業医でも臨床力は試されるところは大きいと思います。

避けて通れない年収の話

産業医で言いますと、やはり当直・オンコールもなく、加えて時間外勤務もほとんどないという方が大半だと思いますので、常勤先単体での年収面で言いますと勤務医よりは下であると思われます(一部の大企業お抱えスーパー産業医を除く)。

となりますと、バイトをするということになりますが、「外来で診療できるか」などのバイトをできるスキルは少なくともあるか否かが年収に大きく関わってきます。その点、やはりしっかりと専攻医として研修を行っていたか、ということが重要となります。

幸い、私も外来バイトはできる程度でしたので、その点はかなり稼ぐ上では助かっています。「バイトができるスキル」を磨いておくことはとても大切です。

「人生経験」も大切な要素

私は「結婚・子供を持つといった経験」「メンタル不調で休職した経験」「退職・転職をした経験」をしたことがあり、面談に来た同じような境遇の社員さんに寄り添いつつ話を聞くことができるようになったのではないか、と思っています。

また、臨床医時代に触れ合ってきた、様々な年代、バックボーンを持った患者さんを診療することで、その経験で社員さんの悩みなどを理解することもできていると思います。

こうした自他両方の「人生経験」も産業医として働く上で重要な要素であると思います。

病気だけでなく、多くの問題を抱えた患者さんと向き合うという経験を重ねてきたドクターは、やはりその分大きな経験値を得ているように思います。

以上です。
現在、臨床医を続けながら産業医になろうとお考えの先生もおられると思います。その決断をする時、今までのキャリアがムダなようにお感じになることもあると思いますが、決してそのようなことはありません。

ぜひ今まで培った経験やスキルを新たなフィールドで活かしていただければと思います。なお、私は今まで三度の転職をしており、そのたびにリクルートドクターズキャリア[PR]と、エムスリーキャリアの転職エージェントに相談してた上で転職をしています。もし転職活動でお悩みということでしたら、そちらにご登録の上、相談してはいかがでしょうか。

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