私自身、後期研修医(現在の専攻医)の時にドロップアウトし、「臨床医はもう無理だわ」と思って産業医になった口です。その後、2度の転職はしているものの、なんとかゆるゆると産業医を続けてこれています。
ですので、「産業医科大を出て産業医」あるいは「産業衛生専門医の資格を持ってます」といったバリバリの意識高い系産業医ではありません。そうした意識高い系産業医や保健師の方々のツイートを読んでは、「ああ、こうはなれないなぁ」などと思う日々です。
中には、こうした意識高い系産業医のツイートを読んだり、話を聞いたりして心を折られてしまい、「産業医になるのは無理だわ…」と思われるかもしれませんが、ちょっとお待ち下さい。そんなにビビらされる必要はありません。
今回の記事では、安心して産業医になっていただくためのご説明をさせていただければと思っています。
産業医はみんな「膨大で特別な知識・経験が必要」という誤解
意識高い系産業医に、「産業医になろうと思うんですけど、どんなことを学んでおいた方がいいですか?」と相談したりしますと、いきなり難しそうな書籍を紹介されたり、「最低限、安衛法は一通り目を通しておいた方がいいな」「労働衛生のしおりは通読しなさい」といったことを言われるかもしれません。
あるいは、「特化物、有機溶剤、PDCA、リスクアセスメント…」など、小難しいワードが飛び出してきて、「…もう結構です」と言いたくなるなんてこともあるかもしれません。
ですが、産業医のみんながみんな、危険な薬物や作業のある工場に勤務するわけでもなく、「オフィスでデスクワーカーたちを相手にする」ということもあるわけです。現に、私は3社の産業医を経験していますが、どれも工場併設の会社などではありませんでした。
そうなりますと、仕事と言えば
・長時間勤務者の面談
・メンタル不調者の面談
・健康診断の判定や受診勧奨
・安全衛生委員会への出席や職場巡視
といったものがメインです。これらの業務を、会社から文句が言われない程度にこなす上では、さほど知識や経験はいらないと思います。
大抵の方は、半年と経たずして仕事を一通り覚えられると思います。
産業医になると「訴えられちゃう」という誤解
これまた意識高い系産業医の方に相談しますと、「社員が過労死でもしたら、会社だけでなく産業医も責任を問われるかもしれないよ」「産業医が会社とグルだと訴えられるなんてことも最近はあるからね」などと、殊更に「自分の仕事は大変で気をつかうんだぞ」とアピールされる方もおられます。
しかしながら、それを言えば臨床医だって医療訴訟に巻き込まれることはあります。ですが、内科外来でバイトを続ける私自身、あるいは私の知りうる限りの周りの医師は訴えられていたりしません。
また、産業医を10年近く続けていますが、幸いにして訴えられるなんてことはありませんでした。恐らくですが、外科医・産婦人科医・小児科医の方が訴えられる可能性は高いのではないでしょうかね。
「面談でよほどの暴言を吐いて、社員さんを追い詰める」「よほどのブラック企業で、社員さんたちを放置してなにもしない」といったことがなければ…と思ったりします。
「キャリア志向」じゃなくたっていいじゃない
ツイッター界ですと、巨大一流企業、あるいは外資系企業で他の産業医や保健師としのぎを削るようにして働き、キャリアを積んでいるといった方がおられますが、産業医はそんな方々ばかりではありません。
私は現在、一部上場企業…の子会社でこじんまりと働いており、十分満足しております。ゆったり働きつつ、徐々に知識や経験を積み重ねていくことでも充実感は得られるのではないかな、と思っています。
このあたりは、やはり合う・合わないの世界ですね。私は巨大企業で他の産業医と上手くやっていくといったことができませんでした。
以上です。
ぜひ産業医という仕事に興味があるということでしたら、ぜひこちらの世界に飛び込んでみていただければと思っています。ただ、未経験だったりしますと、求人を調べて自ら応募する…というのはなかなかに難しいです。ですので、ぜひリクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアなどの転職エージェントに相談して求人紹介などをしてもらうことをオススメします。ちなみに利用料は無料ですので、ご安心を。
なお、どの人材紹介会社がいいのか分からない、迷ってしまうということでしたら、
こちらの記事をご参考にしていただければと思います。