昨今、産業医にメンタル不調者の対応を求めたいという企業は多くなってきていると思います。背景としては、やはり実際にメンタル不調で休職している社員が多いことや、ストレスチェックの導入、退職者の増加→新たな社員採用のコストに悩んでいる企業が多いことなどが挙げられると思います。
そうなりますと、「メンタル不調者に対応するのは精神科医の方が良いだろう。だったら、内科医である私は産業医になってもダメなんじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、実際のところはそんなことはなく、精神科をメインに診療していた医師ばかりが産業医になっているわけではありません。
そこで今回の記事では、「内科医でメンタル不調者は診れないから…」と産業医になるのを躊躇う必要はない理由について書いてみたいと思います。
「メンタル不調者」ばかりが面談にくるわけではない
産業医が社員との面談を行う際、なにもメンタル不調者ばかりが来るわけではありません。中には、癌患者で現在通院中であるという方の相談に乗ったり、あるいは重度の糖尿病患者に就業制限を検討するといったことも面談の中で行うことはあります。
そうした社員さんと話をする上では、やはり内科医としてのベースがあった方が話をしやすいということはあるのではないでしょうか。
実際、私も抗癌剤治療を自分でも患者さんに行っていたので、「どのぐらいのペースで投与を行うのか」「休薬期間はこのぐらい」「骨髄抑制などの副作用」が感覚的にイメージしやすいということはあります。また、健診判定業務については、やはり内科医の方が検査データを把握しやすいということはあるのではないでしょうか。
ですので、ここらへんは一長一短、内科医であろうと精神科医であろうと、得意分野が違うだけといった話ではあると思います。
企業によって求める産業医像は異なる
企業によって、「メンタル不調者の対応に力を入れたい」「禁煙対策や、社員の生活習慣の改善を行いたい」といった特色はあります。
ですが、どこの企業も「メンタル不調者の対応」ばかりに注力しているというわけではないので、このへんも「イヤなら採用しない」ということであり、「自分を求める企業」を探せばいいだけの話ではないかな、と私としては思います。
産業医としての「経験」で補える部分も
産業医としてメンタル不調者の対応をしておりますと、話の聴き方(傾聴・共感)も慣れてきますし、「この社員にはこういうふうに対応しよう」ということが段々と分かってきます。
未だにメンタル疾患の治療などについては、分からないことが多いというのが実情ですが、それとは別に「産業医としての対応」についてはある程度慣れてきて、困らない程度にはなっているように思います。
つまりは、産業医としての「経験」で補える部分も多いにあると思いますので、そんなに尻込みする必要はないと思います。
以上です。
繰り返しにはなってしまいますが、内科医だからといって産業医になるのを諦める、躊躇する必要なんてありません。ぜひ興味がありましたら、やってみてはいかがでしょうか。