産業医面談で泣いてしまうことは、決して「恥ずかしいこと」や「謝らなければならないこと」ではありません

産業医面談にいらっしゃった社員さんで、涙ぐんでしまったり、あるいは完全に泣き出してしまうという方もいらっしゃいます。社員さんが面談で泣かれることは、産業医にとっては決して珍しいことではありません。また、それは男女問わずです。

面談室にはティッシュが置かれているところが多いですが、産業医や保健師が泣かれている社員さんにそっと渡す、なんて光景があるわけです。

泣いた社員さんは、そのことを気にして「すみません…」と謝られたり、「恥ずかしいです…」などとおっしゃられたりします。ですが、面談室で泣くのをこらえたり、泣くこと自体を恥じることはありません。その理由について今回の記事では書いてみたいと思います。

メンタル不調ではそもそも仕方のないことです

メンタル不調の場合、非常に重いストレスを抱えていらっしゃる方がほとんどであると思います。さらには、「感情を抑える」というブレーキも効きづらい状態になります。

ですから、メンタル不調で今までの辛く苦しい日々のことであったり、病状のことを話していて泣いてしまうのは難しいことであると思います。そのことを産業医であったり、保健師であれば理解しているはずですので、「泣くのを我慢しなきゃ」と思う必要はないです。

また、泣いてしまったとしても「メンタル、弱ってしまってるからな」と思って、別に恥ずかしく思わないでいただければと思います。

「泣くほど辛い」ことも重要な情報です

産業医として社員さんの話を聞く上で、「どれぐらい辛いと思っているんだろうか?」というのは分かりづらかったりすることもあったりします。

中には淡々とお話になる社員さんもいらっしゃったり、いくつかあるストレスの原因で「何が一番辛いことなんだろう?」と思いながら聞くこともあったりします。その中で、感情の高まりというのは一つの重要な情報となると思います。

こうしたことからも、「産業医の前で泣いてしまう」こと自体にも意味があると思っていただき、その点からもお気になさらないでいただければと思います。

傾聴の基本は共感・理解

産業医として話を聞く上で、「しっかりと耳を傾ける=傾聴」が必要です。そしてその傾聴の基本としては、「共感して、理解を示す」ことが必要になります。

逆に言えば、こうしたことができず、冷笑したり茶化したりするような産業医は失格ですので、「たとえ泣いてしまっても、傾聴してもらえる」と思って、少し落ち着いてから気にせず話を続けていただければと思います。

また、男性に多いようですが、「男が泣くのは恥ずかしい」「大の大人が泣き出して恥ずかしい」と思われているようです。ですが、今まで溜まったストレスや、抑圧された感情を受け止めるのも産業医の仕事ですので、ぜひ面談室ぐらいでは解放していただきたいところです。

泣くことによる、いわゆる「デトックス効果」はあると思います。泣いてお話をしていただきますと、大抵の社員さんたちはスッキリとして表情になります。

以上です。
ただ、そのまま外に出られますと周りの社員さんたちが驚いてしまいますので、少しクールダウンの時間は必要です。ちょっとお手洗いによっていただいたりして、一人で落ち着ける場所にいていただければと思います。

産業医の面談室が、「どこにもストレスのやり場がない」と思われている方々が、そのストレスを吐き出せる場所となれると良いな、と私としては思っております。

もちろん、無理に泣くことはありませんが、産業医面談で泣いてしまうことは決して「恥ずかしいこと」でも「謝らなければならないこと」でもありません。「泣いてしまいそう…」と我慢してしまうのではなく、「泣いてしまってもいいんだ」と思って面談室に足を運んでいただければと思います。

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