後期研修に挫折して産業医となった私が考える「産業医に向いていると思う人」の5つの特徴

私は後期研修医時代に医長から「君、臨床に向いていないよ」と宣告されました。自分でも薄々感じてはいたこともあって、「では、臨床以外の道を探そうか」ということで産業医にたどり着いたという経緯があります。

ただ、「臨床に向いていない人」がすべからく「産業医に向いている」とは言えず、そこにはやはり適性というものがあるのだと思います。そこで今回は、「産業医に向いていると思う人」について書いてみたいと思います。

ただし、あくまでも「後期研修医を辞めて産業医になった私」による私見であり、バリバリのエリート産業医になるような適性ではないので、あしからず(笑)

「診療すること」への強いこだわりがない

産業医の仕事と言いますと、「社員との面談(復職可否判定面談、健康相談、フォローアップ面談、長時間勤務者面談など)、安全衛生委員会への出席、職場巡視、健康診断の判定業務・受診勧奨、人事を中心とした会社側からの相談業務」などがあります。

同じ「医師」と言えど、臨床医の先生方とはやはり業務内容も大きく異なると思います。特に、産業医は「患者を診療する」ということは業務として担わないため、診療自体に強い思い入れをお持ちの方ですと、臨床が恋しくなるのではないかと思います。

言い方は悪いかもしれませんが、「医者としてちやほやされる」ことを望んでいる方は産業医になることで違和感を感じてしまう可能性はあるかもしれませんね。産業医として社内にいると、こういうことはあまりありません。

そもそも私は「臨床医であることへの憧れ」は少ないタイプでした。

「仕事は仕事」と割り切ることができる

特に健康相談の判定業務(健診・人間ドックの結果を見て、受診勧奨をする人を選り分ける作業)などの事務作業を淡々としていたり、あるいは面談で仕事や上司などの愚痴を延々と聞いていたりしますと、「あれ?私の職業ってなんだっけ?」と思いたくなることもあります。

しかしながら、「仕事は仕事。就業時間内は与えられた業務をやりきりますよ」という割り切れるタイプですと、産業医になったとしても問題ないかな、と思われます。

逆に「それって医者の仕事なの?」と言ってしまうようなタイプの方は産業医は難しいかもしれませんね(そもそもそのようなタイプの方は産業医になろうとはお思いにならないと思いますが)。

派手な救急での診療というよりは、病棟や外来でコツコツ、淡々と仕事することが好きという方には向いていると思います。

柔軟に「問題解決」に当たれる

ガチガチに「医学的な正しさ」を押し付けてしまうと、社員さんや会社側が困ってしまうというような場面が少なからず出てきます。

たとえば、入院していていざ復帰という直前、産業医面談を行った社員さんがいました。「このまま働かせるのはちょっと心配だな…」というような方がおり、復職可否判定で難色を示したところ、「どうしても出社する必要があるんです。急遽、退職者が出てしまって…」と繰り返し出社の許可をして欲しいと頼まれました。

結局、「フォローアップのための面談を行うインターバルをいつもより短めに設定して状態を確認する」という条件で復職の許可を出しました。この点、産業医によっては「いや、ダメだから」と復職を許可しない、突っぱねるという方もおられる方もおられるでしょうけども、その点、ある程度は柔軟に交渉に応じる必要はあるのかな、と私としては思っています。

また、社内での禁煙活動もそうです。「喫煙ルームなど撤廃しろ!」と医学的には言いたくなりますが、会社というのは様々な人の意見も聞いた上でルール作りをしていく必要もあります。「清濁併せ呑む」柔軟な姿勢で社内の問題解決に当たっていくことが求められると思われます。

「話を聞く」ことが苦ではない

いわゆる「傾聴」ができる方は、産業医として大きな資質だと思います。面談でいきなり心を開いてくれる社員さんというのはあまりおられず、十分に話を聞いてようやく本音をぽろり、とさせてくれます。

その本音を元に、今後どう対応していくのが適切かといった話し合いをしていくことで上手くいったというケースは多いと思います。人事側も、そのような「本音を引き出す」ことを期待して社員さんとの面談をセッティングするということもあったりします。

実際、私は初期研修医時代、なんの取り柄もありませんでしたが、「患者さんの話をじっくり聞く」ことだけは指導医から褒められたことがありました。外来や病棟などで、じっくり患者さんの話を聞けるタイプは産業医に向いているかな、と思っています。

様々な視点に立って考えることができる

たとえば、面談で「上司からパワハラを受けました」と涙ながらに語る社員・Aさんがいたとします。ですが、産業医としてはその発言を鵜呑みにしてしまうのは危険だと思います。

上司や同僚からの言い分を聞いていくと、そのパワハラを訴えるAさんの勤務態度があまりに酷く、迷惑をこうむっているという事実が明らかになることもあったりします。

もちろん、パワハラはあってはならないことではありますが、Aさんの発言を鵜呑みにしている状態と、「何度注意しても改めないため、少々叱責がヒートアップしてしまったんだな」と分かった状態では、心象は大きく異なると思いますし、対応も異なると思います。

証言一つをとっても、様々な人の言い分があり、見方もまた変わってきます。様々な視点に立って考えることができる、それが好きだというタイプは産業医に向いているかなと思っています。

物事を様々な視点に立って「客観的に、冷静に見る」ことができるタイプは産業医向きかもしれませんね。

以上です。
もし私同様、専攻医/後期研修医の研修中に挫折して「産業医になろうかな…」と思われている方がおられましたら、上記とともに、

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も経験談を元に書いており、参考にしていただけますと幸いです。

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