産業医面談の中で、休職中の社員さんが復職するに当たって、「復職の可否を判定する面談」があります。
うつ病だけのメンタル疾患だけでなく、手術を伴うような大病であったり、あるいは病気や怪我などで「今までの働き方が難しい」ような場合でも行われたりしますが、この記事ではメンタル疾患にのみ限って、「復職を認めない」ケースについて書きたいと思います。
主治医から「既に復職許可が出ている」のが前提ですが、その上で産業医が「この社員さんは復職できるのだろうか、就業制限としてはどのようなことが必要か」ということを判断します。
大半は「復職OK」とすることが多いですが、中には「まだ復職する段階にない、休業が必要」と判断することもあります。それはどのような場合なのかと言いますと、次のような場合があります。
生活リズムが整っていない
私たちは「起きて・寝て」を日々繰り返しているわけですが、その時間が大幅に乱れてしまっていると、やはり復職するのは難しいと思われます。この状態を「生活リズムが整っていない」と言います。
やや極端な話ですが、「朝起きるのが辛くて、昼ちょっと前ぐらいに起きています。夜は逆に眠れずに深夜3時過ぎぐらいに寝ます」という人がいた場合、果たして「7時に起きて出社し、8時間働く」ことができるでしょうか?
休職前に「朝7時に起きる、夜は0時には寝られている」生活リズムだった場合、そのリズムにまずは戻すことが前提であると思われます。この点、産業医との面談前に、「休職前と同じ起床時間・就寝時間に戻せるのか」を確認をぜひしておきましょう。
睡眠導入剤などを内服されていても、「生活リズムが整っている」ようであれば問題ありません。
日中の活動量が不十分
復職するには「体力がある程度戻っている」ことも重要です。「通勤して、8時間勤務する」ことは、結構な体力が必要です。
復職された方は「最初の1週間がとにかく辛い、大変」とおっしゃる方が多いです。思った以上に休職中、体力は低下していると思っておいた方がいいでしょう。
産業医としては、「外出されていますか?」「散歩など、体を動かしたりはしていますか?」「通勤の練習などはされていますか?」などといった質問をします。こうしたことでどの程度の体力の状態なのかといったことを判断します。
「あまり外出もしていません。ほとんど家にいてゴロゴロしていることが多いです」「どうしても疲れてしまって、昼寝を必ずしてしまっています」といった場合、「もうちょっと外出したり、通勤の練習をしてからにしましょう」と提案することもあります。
電車通勤であれば、朝、通勤時間帯の電車に乗って、会社近くまで行く「通勤訓練」をしてみるのも手です。
パフォーマンスの改善に乏しい状態
デスクワークをされている方の場合、「本や書類を読んでいても、なかなか頭に内容が入ってこない。何度も同じところを読み直してしまう」「デスクワークを始めても落ち着かず、考えがまとまらない」といった状態ですと、やはり「病状の改善に乏しい。もう少し休業が必要」と判断したりします。
目安としては、「休職前、普通に働けていた時の8割ぐらいのパフォーマンスが出せる」といった状態であると、十分に復職ができると思われます。この点、「新聞や、仕事に関係のある専門書を読んで、内容が十分頭に入ってくるか」「本を要約してまとめてみる」といったことを通じて、「業務に耐えうるだけ回復しているのか」といったことを確認してみるとよろしいのではないでしょうか。
とりあえずのところ、私としては上記の3点についてはクリアしていることが復職の条件であると考えています。
病状の回復で言いますと、「生活を普通に送れる状態→仕事ができる状態」という二段階になっています。まずは自分でどのような状態にあるか考えてみて、もし産業医に「復職はまだ早い」と言われるようだったら、なにが原因なのか、どのようなことができるようになったら復職できるのかを確認してみましょう。
「早く復職しなければ」という焦りが感じられる
家族がいる場合、「自宅でゆっくり静養する」というのがなかなか難しかったりもします。そのため、「早く復帰しなければ」と考えてしまうのも分かりますが、そのせいで「十分に休めていない」状態で復職を希望してしまうということがあり得ます。
「復職を希望するタイミングが早すぎる」「不眠や抑うつ症状などがあまりよくなっていないのに復職をしたがっている」「会社に面談に来ることすらしんどそうなのに、復職を希望している」…なんてことがありますと、産業医としては「あ、焦ってるな」と思ってしまいます。
休職を繰り返しているケース
一度目の休職であれば、「はい、そうですか」とある程度目をつぶって復職を、ともなるかもしれませんが、それが二回目、三回目の休職であれば「復職して大丈夫だろうか」と思われてしまう可能性もあります。
「休職期間が短かったのではないだろうか。今回は、もう少ししっかり休職をしてからの方がいいのではないだろうか」と思われているのかもしれません。
以上です。産業医に復職を許可してもらうためのポイントとしては、
にまとめておりますので、ご参考にしていただけますと幸いです。