私も産業医として、休職中の社員さんと面談を実施し、復職の可否を判定するということをしています。その中で、メンタル疾患を抱える社員さんに「まだ復職は早いと思います。もう少ししっかりと休養してからにしましょう」と判断することもあります。
社員さんは「主治医もOKを出してるし、当然このまま復職できるはず」と思っているわけで、「なんでですか!」と怒り出してしまったり、明らかに不機嫌な様子になることもあります。
こうした「復職を認めない」時に、産業医にどう復職を認めさせるかという点について、今回は書いてみたいと思います。
休職中の経過をしっかりまとめた上で面談に臨む
産業医も、大体は主治医からの診断書や意見書を読んだ上で面談を行うわけですが、具体的にどのような経過を辿って今の状態になっているのかは分からないということもままあります。
そんな時、経過などについては社員さん自身から伺うわけですが、その説明によっても「あ、そんなに症状はよくなってるのか」と思うのか、あるいは「え?全然良くなってないじゃない」と思うのか、その印象は大きく変わります。
休職直前にどのような症状があり、どのような治療・療養によってどのような改善が見られ、今に至っているのか、その内容についてはしっかりまとめておきましょう。
また、うつ病などのメンタル疾患での休職であった場合、以下のようなことが質問されやすいので、準備しておくとよろしいでしょう。
・今、何時に寝て何時に起きているのか、日中はどのように過ごしているのか?
・復職に向けてどのようなことをしているのか?→回答例:体力作りのため、散歩やスポーツジム通いをしているなど。
・復職によってはどのようなことに注意していきたいか?→回答例:業務を一人で抱え込んでいたので、今後は上司と密に相談していきたいなど。
こうした、面談に向けて「どのような経過だったのか」「病状はどのように改善したのか」「復職できると考えられる自分なりの根拠」などはしっかりまとめておいて臨んではいかがでしょうか。
「なぜ復職できないのか?」という理由を明示してもらう
たとえばうつ病などのメンタル疾患で休職していた場合、次のような点で「まだ復職できません」と判断することがあります。
・明らかに生活リズムが乱れていて、昼夜逆転状態にある。あるいは朝、始業時間に間に合う時刻に起きることができていない。
・十分に睡眠時間がとれていない。あるいは中途覚醒(途中で起きてしまう)などが起きていて、睡眠の質もよろしくない。
・生活リズムは整っていたとしても、体力がまだ戻りきっていなくて、毎日のように昼寝している。
など、「働くに十分な状態にある」ということが言えないと判断した場合は、「復職を認められない」と結論づけます。私でしたら、面談の際に「これこれこういう理由で復職は早いと思います」と説明しますが、産業医の先生によっては、説明しない場合もあると思います。
そんな時は、「私はどうして復職できないのでしょうか?どのような点に問題があるのか、具体的に教えていただけますか?」と説明を求めるといいと思います。
復職するための「条件」を具体的に明示してもらう
上記の通り、まずは「どの点に問題があるのか」を確認します。その次のステップとしては、「では、復職をしていいと判断する上で、具体的な条件にはどのようなものがありますか?」と産業医に質問してみましょう。
私だったら、恐らく以下のような条件を提示すると思います。
1) 生活記録表(朝起きてから夜寝るまで、どのように過ごしたかを記録する表)をつけてもらい、出勤に間に合う時間に起きることができているか、夜はしっかりと眠れているか、日中の活動は十分かを確認させてもらう。
2) 生活リズムが整ったのを確認した上で、1週間の「試し通勤」(始業時間までに出社してもらうことができるかの確認)を実施してもらう。
3) 試し通勤と合わせて、新聞の要約や読んだ本の要約など、デスクワークに近い作業を実施してもらう。
こうした条件を提示させてもらい、クリアできているかを確認します。逆に言えば、復職NGを出された社員さんからしても、条件を具体的に明示された方が分かりやすいのではないでしょうか。
以上です。
まずはしっかりと対話し、その理由や根拠を聞いた上で、どうすれば復職できるのか、その条件を明示してもらうという流れです。産業医に「なんで復職できないわけ?」と食ってかかるのではなく、このように話し合いの中で復職に向けたプロセスに話を持っていっていただけると、産業医としても非常に助かります。