産業医として面談を行っていて思うことですが、30代~40代前半のメンタル不調の社員さんと話をすると、「休むぐらいだったら転職します」と言う方が一定数いらっしゃいます。
休職することでのキャリア上のデメリットと、転職とを天秤にかけた上での発言だと思いますが、やはり30代~40代前半ということですと、「転職も選択肢の一つ」であって、実際に転職される方も多いように思います。
一方で、そうはいかない方もいらっしゃいます。40代後半、50代ということになりますと、年齢的に「たやすく転職できない」という事情もあるようで、思い悩む度合いも深くなっているように思います。
「逃げ場がない」という問題
私自身も後期研修医だった頃、転職を考えてはいましたが、やはり「研修を続けなければ専門医資格を取得できない」ということが一つの枷となっていました。
当時は新専門医制度も始まっておらず緩かったとは言え、研修施設を一から調べて転職するということは大変だったろうと思います。「後期研修を続けなければならない」「今の職場と同じようなことを繰り返さない」ということを前提で施設を探すのはやはり骨が折れます。
結果、私は「後期研修を続けるのをやめる」という選択をしてその病院を退職しました。言わばそのような「逃げ場を作れた」からよかったと思いますが、その選択すらとれなかったらどうなっていたんだろうか、と怖さすら感じます。
メンタル不調だけでなく、問題行動によって資格すら失う可能性もあるわけで、産業医への転職ができてよかったな、と改めて思います。
「逃げ場を作る」という考え
「逃げ場がない」ということは、精神的な負荷としてとても高いと思います。そんな時、「逃げ場を作ったらどうだろうか」と考えることも一つの手であると思います。
臨床医に向いていないと自覚してもいたし、医長から実際に言われた私が、「それでも臨床医を続ける他はない…」と考えてしまっていたら、より追い込まれていたと思います。
そこで、「臨床医をやめて産業医っていう手もある」という逃げ場が新たに生じたことで、私は救われたように思います。「臨床医を続ける」という道、当初考えていた「専門医資格取得→開業」という道もあったと思いますが、それが果たして継続できたかと考えると疑問です。
ただ、逃げるにしても勇気・覚悟・決断が要るのはたしかです。最初の一歩を踏み出すことはとても大変ですが、私は一歩踏み出してよかったな、と思っています。
窮地では視野が狭まる
とかく精神的に追い込まれている時は、視野が極端に狭まったような考え方しかできなくなる傾向にあるように思います。「~するべき」「~しなければならない」といった考えを日頃からしていますと、その傾向はさらに高まってしまうと思います。
本来ならば逃げ場はあるにも関わらず、そこに目がいかない、また転職というナイーブな事柄だけに、なかなか相談できないということもあるかもしれません。
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