精神障害の労災認定件数が年々「過去最高を更新」といったことを踏まえますと、産業医における「メンタル不調者の対応」という業務の割合、比重は年々高まっているようにも思います。
その点からすると、「精神科のバックボーンを持つ産業医を求める企業」は増える傾向にあるのかな、といった予想は立つかもしれません。実際のところ「精神科の臨床経験のある産業医を希望」といった企業の求人を見かけたこともあります。
しかしながら、産業医のバックボーンは本当に様々で、「元眼科医で産業医」「元外科医で産業医」という方もいますし、私も「元内科医で産業医」になった内の一人です。「元精神科医で産業医」はたしかに多いかもしれませんが、極端に偏っているという印象はありません。
産業医と精神科
基本的に、「いきなり産業医、それからずっと産業医」という方は稀であると思います。なんらかの臨床経験を経て産業医になった、という方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
そこで気になるのが、「転職」と経歴との関係です。上記のように、「元精神科」を希望する求人というのは、実は多くはありません。そもそも常勤産業医として働くドクターは少なく、そこまで絞ってしまうと採用が困難になるということもあったりするかもしれません。
たしかに、採用面接で「当社はメンタル不調者が多く、そうした社員への対応数は多いかもしれません。そうした対応はお願いすることはできますでしょうか?」といった質問を受けることはあります。
実際、産業医として働いていますと、メンタル不調者の面談、復職に当たっての面談などは日常的に行っています。ですので、産業医経験があれば「はい、現在も人間関係、業務過多、業務内容とのミスマッチなど、幅広い原因をきっかけとしたメンタル不調をきたした社員さんに数多く対応しておりますので、御社におきましても対応させていただくことは可能かと思います」といった返答ができると思います。
精神科医ではないからといって、メンタル不調者に対応できないというわけではありませんし、十分対応することは可能だと思います。精神科の臨床経験のある産業医を希望する企業は中にはありますが、多くはないと思いますので、その点、転職において「非精神科医だから苦労する、割りを食う」ということはないと思います。
産業医と内科
元内科医の私からしますと、「内科」を希望する企業というのも中にはあります。診療所を併設しているような企業で、「内科の外来を担当してもらうため、内科の臨床経験のある先生を」というところはあったりします。
また、「弊社は社員の平均年齢が高く、生活習慣病をもっている社員が多い。ですので、ぜひ内科の経験のある産業医の先生を」という企業も中にはあります。ですが、これも上記の企業と同様で、「内科の臨床経験のある産業医ばかりが優遇される」なんてことはありません。
結論、「◯◯科だから産業医の転職で有利」ということは現状あまりなく、「企業による」というのが正直なところだと思います。企業によっては、「外科」「整形外科」といったバックボーンをお持ちのところもあったりします。
「精神科医じゃないから…」といったことはあまり思わず、産業医をやってみたいということでしたら、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。リクルートドクターズキャリア[PR]などにご登録の上、求人紹介について相談をしてみると、応募できるところはあるはずです。まずは相談から始めてみてはいかがでしょうか。

