私は産業医としても転職を繰り返しており、現在で3社目です。産業医としての経験・力量という問題も含まれるかもしれませんが、入職してみて「あ、この企業合うかも」「ちょっと合わないなぁ…」というのは結構分かれるところだと思っております。
採用面接を受けに行って、「あ、ちょっとここは厳しいかも…」と思う企業もあり、実際その予感は入職してみて確信に変わったなんてこともありました。
こうした「相性」というものがあるので、たとえば一社、産業医として勤務してみて「自分は産業医に向いてないんじゃないか…」と考えてしまうのは早計ではないかと思っています。
今回の記事では、そんな産業医と企業の「相性」の問題、特に求人票から見てとれる点について書いてみたいと思います。
求める経験・スキル
「求める経験・スキル」の記載内容については、その企業が求める「産業医像」のようなものが反映されると思っています。
たとえば、「産業医資格(認定産業医など)」のみを求め、さらには産業医の業務内容にも「産業医業務」とのみ書いてあるようであれば、「あ、法定で定める産業医の業務、つまりは安全衛生委員会への出席や職場巡視、長時間勤務者を対象とした面談なんかをして欲しいんだろうな」と見てとれると思います。
語弊を招いてしまいそうですが、凄く平たく言えば「言われたことをちゃんとやってくれてさえいれば結構です」というような感じです。
一方で、「企業への提案力のある方」「会社や社会のニーズをしっかりと把握し、企業への提案のできる方」「自ら発信力をもって業務にあたれる方」といった内容が書かれた企業もあります。
明らかに上記の企業と異なると一見して分かりますが、法定の業務に加えて、産業医として「産業衛生の分野について、企業を引っ張っていって欲しい。色んな改善案を提案して欲しい」というような希望があると見てとれます。
言い換えれば、「会議や安全衛生委員会で積極的に発言をして欲しい」「定常業務に加えて、新たな施策について機会があるごとに提案をして欲しい」といった希望があるのかな、といったところでしょうか。
後者のタイプの企業に勤務していた頃は、「意見を」「提案を」と求められて辛い思いをしておりましたが、これもまた相性として「その産業医の性格や資質に」よると思います。ですので、「後者のタイプの方が性に合っている」という人もいると思います。
企業の規模
企業の規模は、「社員数」だけでなく「産業医・保健師の在籍人数」などを参考におおよそうかがい知ることができるかな、と思われます。
常勤産業医が在籍しているとなると、基本的に1000人以上ということになります(安衛則の定める特定業務の企業ですと、500人以上ということになります)。ですが、従業員数3001人以上の規模ですと、産業医は2人以上ということになります。
単純な話、社員数が多くなればなるほど、健診の判定業務や面談の数も多くなっていくわけで、また多くの同僚・スタッフと働くことが得意か不得意かという問題も出てきます。また、大きな企業ですと意思決定に多くのプロセスや時間を要することもあります。
社員数、全国で1万人以上の超大手企業にも勤務したことはありますが、やはり私には上記の点で「1000人規模のところがいいわ」と考えています。
一方で、「産業医未経験で、経験をしっかりと積みたい」「他の産業医や保健師と相談しつつ業務にあたりたい」という方もおられると思います。その点もまた、産業医と企業の相性という問題になってくると思います。
業務内容
業務内容を見ていても、企業が産業医に求める内容が見てとれることもあったりします。「メンタル不調者面談・休職前面談・復職面談…」などが並んでいて、なおかつ「精神科経験者優遇」なんて記載がありますと、やはり「ああ、この企業はメンタル不調者対応でお困りのようだぞ」ということが分かってきます。
あるいは、製造業の企業で、「特殊健診(有機溶剤、じん肺、特定化学物質)」が書いてあったり、あるいは「安全衛生管理業務、健康管理業務」なんて記載があったりしますと、やはり「工場併設で、そちらの安全衛生管理をしっかりやる必要があるんだな」と分かるわけです。
このあたりも、「メンタル不調者対応の方が得意」「製造業の企業で安全衛生管理に携わりたい」など、それぞれの産業医で分かれるところだと思います。
以上です。
こうした「相性」を考慮して、求人を自分で「ネットで探す」というのはなかなかに難しい問題です。手間ヒマを考えたら、まずはリクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアの転職エージェントに相談をすることをオススメしたいところです。