産業医として働き出して、仕事にも慣れてきますと「なにかキャリアアップになりそうなものを」と考え始める人も出てくるでしょう。私もその内の一人です。
また、認定産業医の資格更新をしなかったからといって、「産業医として働けない」というわけではありませんが、期限切れの証書を企業へ提出するのも格好がつかないということもあり、「それだったら更新不要の労働衛生コンサルタントの資格を」ということでもありました。
それで受験して合格しますと、今度は「この資格、メリットとしてはどのようなものがあるんだろうか?」と思うようになったわけです。特に、転職においてはどのような効果が望めるのでしょうか?
私自身の経験
結論から申し上げると、「企業による」というところが大きいかなと思います。「労働衛生コンサルタント?何それ」という採用担当者も当然いますし、その一方で「え?労働衛生コンサルタントの資格をお持ちなんですか」と、その価値を認めてくれる担当者もいます。
私自身の経験では、産業医として採用してくれた企業で、入職した後にその担当者が「調べたら、労働衛生コンサルタントの合格率って3割ぐらいなんですね。産業医の中でもなかなか合格できない資格ということが分かって、これは凄いなと思いましてね」と、推してくれた理由を教えてくれました。
私の場合、資格をとっておいてよかったな、という結果になったわけです。一方で、「まぁ、多少は書類選考が通りやすくなるかなってぐらいです」という企業もありますし、「全然効果なし」で、人柄採用だったり、出身大学・経歴・臨床系の資格の方を重視するところもあります。
民間医局[PR]の産業医求人を見ておりますと、とある大手家電通信販売企業の求人に「日本産業衛生学会専門医資格または労働衛生コンサルタント資格を有する方歓迎」とありますので、実際のところ一定の効果はあるのかなとも思います。
ただ、すべての企業で言えることではなく、上記の通り、あくまで「企業、特に採用に関わる担当者・部長や役員による」というのが正直なところだと思います。
受験のススメ
転職でどう活かせるのか、という視点だけではなく、労働衛生コンサルタントの資格を持つことで得られるメリットとしては他にもあると私としては思っています。
企業側からの相談を受ける際、以前だったら「…とりあえず、隠れてネット検索してみるか」なんて考えていましたが、受験後は「まずは3管理で問題を分解して考えてみよう」「リスクアセスメントを実施しよう」といった、問題解決のフレームワークとなるツールが増えたり、「これはあの資料にあたってみた方がいいな」「根拠となる法律は何だろうか?」など、どう調べていったらいいのか、ということが自然と分かるようになりました。
そして何より、産業医としての経験年数が増えても「自分は素人…どこまでいっても自信がない」状態で、なかなか企業側へ意見を伝えることができなかったものの、とりあえず「労働衛生コンサルタント」という肩書きが一つ増えたことで、「少し自信がついて」話をしやすくなりました。

「肩書き一つで、別に何も変わらないだろう」と思われるかもしれませんが、合格して「労働衛生分野の専門家のはしくれと認めてもらえた」と、ほんの少しの自信をつけるためにも、重要な試験という側面はあるのかな、とも思います。
また、産業医転職においても、効果は企業によっては異なりますが、プラスになることもあります。リクルートドクターズキャリア[PR]などに問い合わせて、求人紹介を受けた際に「プラスに受け取ってもらえたらラッキー」ぐらいのものかもしれませんが、実際のところ転職に限らず、「産業医として働く」上では、結構大きなメリットをもたらしてくれるのではないか、と私としては思います。
