私自身、後期研修を途中でドロップアウトして、そこから常勤産業医に転職した時、「あれ?」と戸惑うこともありました。違和感のようなものをその時は感じていたものの、上手く「言語化」することができませんでしたが、今、振り返ってみますと「落とし穴」にハマりこんでいたのだと思います。
その当時は落とし穴にハマっていたことすら認識できておらず、困っているという感覚だけはあれど、「あれ?どうしたらいいんだろう」と解決できずにいた記憶があります。
そこで今回は、臨床医から常勤産業医に転職した時に注意したい「3つの落とし穴」について書いてみたいと思います。
落とし穴その1 「ローカルルール」に振り回される
私が一社目に勤務した際、どのようにしてそのルールが決まったのかはわかりませんが、「社員さんと面談をする時、その上司が基本的には同席する」というルールがありました。
ただ、それですと社員さんは「上司の手前、言いにくいこともある」わけで、なかなか本音を話してもらえず、さらには私も突っ込んだことが訊けずに困っていた、ということもありました。
ですが、私も産業医になりたてで、先輩産業医もいない会社だったので「産業医の面談って、こういうものなのか?」と思っていました。
そんな中、転職して他社に移ってみてわかったわけですが、基本的には「社員さんと一対一で話す」ことが多いわけで、「あれ?あのルールって何だったんだろう…」と思ったわけです。
このあたり、産業医になりたてですと「このルール、変えませんか?」と言い出すのはなかなか大変で勇気も要ります。ですが、「私はこういった理由で困っているのですが、このルールは今後どうしましょうか?」と提案することも必要なことだと思います。
落とし穴その2 「ゴールはどこなの?」問題
メンタル不調者のAさんが復職するにあたって、面談をすることになりました。その後、その社員さんは復職しましたが、再び休みがちになってしまうようになりました。
その時、その休職していたAさん、そしてその上司、人事の意見をそれぞれ聞くこともあったわけですが、それぞれがそれぞれの立場で話をしており、その様々な思惑の中で私は一人混乱してしまっていました。
今だったら、どのような点がストレス要因になっているのかAさんに具体的に聞き出し、解決策を相談した上で、それを上司や人事にフィードバックおよび提案をして対応を依頼する、早めの受診を勧める、それでも改善が見られなければ短期間でも休職を勧めてみる…など、介入方法は思いつくわけですが、その当時は「どうしよう…どうしよう…」と一人で困っていました。
結局のところ、「社員が元気に働けて、パフォーマンスや結果をしっかり出せる」にはどうすれば良いのかというゴールが定まっておらず、右往左往していたというのがドツボにはまってしまった理由だと思います。
このあたり、産業医になったばかりだと「ゴールはどこ?」というのが分からず、樹海に迷い込んでしまうということも落とし穴の一つだと思います。
落とし穴その3 「慣れ」の怖さ
一社目は、先輩産業医もおらず、保健師さん2名と働いていました。そのこともあり、「耳の痛い苦言」をあえて言ってくれる人もおらず、1年ほど経って「仕事に慣れた」と思い込んだ頃には、大分、いい加減な仕事ぶりだったと思います。
慣れ、驕りというものは怖いもので、なおかつゲンコツをお見舞いしてくれる方がいないとなると増長し、産業医としてあるまじき態度や言動で保健師さんや人事側を困らせるなんてこともありました。
その結果、報いは当然のように訪れます。3年目を迎える前、人事部長に呼び出されて「次回は契約を更新しません」と告げられました。今なら「そりゃ当然だろ」と思いますが、当時はとても大きなショックを受けました。
もちろん、この点は私のようなダメ産業医のレアケースだとは思いますが、それでもこうしたことは起こり得る、だからこそ「ちゃんと仕事と向き合う必要があるのだ」と思ってもらえればと思います。
それから10年以上、転職しながらもなんとか産業医を続けてこれています。産業医という仕事に興味・関心があり、「この仕事が好き」というところが一番の理由だと思います。もし同様に産業医の仕事にご興味がある、ということでしたら、ぜひチャレンジしていただければと思います。
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