常勤産業医への転職で意識したい、企業の「産業医として働く上での難易度」とその見分け方

産業医として働く、と一口に言っても、その「働く上での難易度」は本当にそれぞれ異なります。では、その「難易度」は何で違うのでしょうか?その一つの指標としては、企業側による「産業医に対する期待値」であると思います。

つまりは、企業側が「産業医に求めること=期待値」が異なり、その期待値の大小が難易度となっているというわけです。平たく言ってしまえば、期待値が大きい→難しい、期待値が小さい→簡単、ということです。

もちろん、企業側の意識が低く、「産業医に求めること?法定業務だけやっといてください」という感覚で、産業医の方が「これはイカン!」と改革に乗り出して、「期待値が低くても業務としては大変」というケースもあります。

ですが、ここでは産業医未経験~駆け出しのドクターが転職する上での話として、期待値が大きい→難しい、期待値が小さい→簡単として説明したいと思います。

産業医の「役割段階」

企業側が、産業医に「期待すること」としてはどのようなものがあるでしょうか。その期待値の小さいものから順に並べていくと、次のようなものがあります。これを、産業医の「役割段階」と呼んだりします。

・第1段階「法定業務」:安全衛生委員会への出席、健康診断の就業上判定といった法律で定められている業務

・第2段階「個別ケース対応」:体調不良・メンタル不調者の対応、休職者の復職支援などの業務

・第3段階「システム構築」:休職~復職のプロセス、健康経営のための中長期的な計画立案や推進など。

・第4段階「産業保健部門の管理」:所属職場の産業保健業務自体をマネジメントするといった業務

・第5段階「産業保健領域全体の統括」:経営理念や方針を踏まえ、活動の優先順位をつける、あるいは後輩の育成業務など。

・第6段階「共有部分への参画」:産業保健の枠を超え、企業価値を高める活動を行う。

こうした役割段階の違いがあり、産業医としてレベルアップするごとに「対応できる段階のステップアップが可能となる」ということになります。

産業医と共に、価値をつくる
健康経営に取り組む企業が増える中、産業医と企業の思いとのミスマッチも多いようだ。産業医の役割とその段階を知った上で、「共に価値を創る」姿勢が肝要である。

企業から「どこまで求められる?」

産業医として経験が浅い状態で、求人紹介会社で求人を紹介され、入職したという場合、どこまで求められるでしょうか?基本的には「第2段階」まで、つまりは個別ケースの対応を求められるというところがほとんどであると思います。

というのも、未経験~経験が浅い産業医が採用されるということは、他の産業医がいて指導できるということころがほとんどです。となりますと、第3段階以上のことは統括産業医や先輩産業医が担っており、「あとは業務負担を軽減する上で、個別ケースを対応してね」ということになると思います。

ただ、産業医一人体制だと、第3~4段階などの業務を任される…というか、やらざるを得ない状況になることもあります。そうなりますと、「え?そんなの分かんないよ。相談できる人いないし、どうしよう…」となる可能性もあります。

難易度を「どう見極める?」

では、難易度をどう見極めるかと言いますと、求人票や採用面接で話を聞くということが主な判断材料となると思います。

求人票に、「医学的な専門家としての意見や提案を積極的にお願いしたい」「健康経営に積極的に参画してもらいたい」などといった記述がある場合は、「あ、第3段階以上のことを求められそうだな」と思ったほうがよろしいかと思います。

採用面接で話を聞いていますと、「なるほど、個別ケース対応がほとんどなのね。あとは他の産業医が嫌がる、支社や子会社めぐりをして欲しそうだぞ」ということが分かったりします。

逆に、上記のような「積極的に意見して欲しい」「当社の至らない点に、ぜひ指摘や改善案を提案して欲しい」などといった話がありますと、「あ、なるほど。第3段階以上を求めているところなんだな」と思ったほうがよろしいかと思います。

ステップアップをどうするか?

先輩産業医がいる大企業で働いていますと、「なるほど、こうして計画立案や関係各所への根回しをするのか」「企業の求めにはこう応じるのか」といったことが傍で見ていると分かってきます。

もちろん、最初は意見などもできないとは思いますが、会議に参加して耳学問を続けていたりする内に、次第に第3段階以上の対応もできてくるのではないかと思います。

ですが、それは焦らず、まずは着実に法定業務から、個別ケース対応などをしっかりとできるようになってからステップアップしていけば良いと思います。この点も、複数の産業医の在籍する企業で働いておくというのは良い経験になると思います。

もしこれから産業医の転職をご検討されていらっしゃるということでしたら、リクルートドクターズキャリア[PR]に紹介された求人を見て、上記のような「難易度」を意識してみてはいかがでしょうか。

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