民間医局で、神経内科医から江崎グリコ株式会社の常勤産業医へ「未経験で転職」されたという、藤並潤先生のインタビュー記事が掲載されていました。
現在、臨床医で「産業医になろうかな」とお考え中であるというドクターにとっては、非常に参考になりますので、ぜひお読みいただければと思います。
以下、内容をかいつまんでご紹介させていただきます。
産業医の「志望動機」
藤並先生は、「脳卒中や認知症は発症そのものを減らしたり、遅らせたりすることこそが重要である」と考えるようになったことがきっかけで、産業医への転職を考え始めたそうです。
つまりは、「脳卒中や認知症の予防に力を入れていきたい→産業医として、社員の生活習慣病対策などに取り組んでいきたい」ということのようです。
また、最後のアドバイスのところで、「これまでの経験と関連性がある職種や職場を探すのが良いと思います」と語っておられました。この点、企業によって、「産業医として求められていること」はかなり異なります。社員の生活習慣病に力を入れたい企業もあれば、メンタル不調者の対応を求める企業もあります。
「今までの知識・経験が活かせるかどうか」という観点から企業を選ぶということはやはり大事なことだと思います。
産業医の業務について
産業医の業務について、臨床医との対比で次のように語っておられます。
「企業ではその方の健康課題、職務内容、本人の希望をしっかり確認・理解し、さらに会社の規則や同僚上司の意見もふまえたうえで適性配置や配慮を行うといった問題解決力が問われます」
「臨床医が向き合うのは、あくまで患者さんと病気です。もちろんご家族や仕事も影響しますが、病気が主体なのか、社会生活が主体なのか、は大きな違いです。その問題を解決するために必要な知識や経験が、臨床医と産業医では異なってくると思います」
とのことです。産業医の場合、単に「疾患だけについて言及する」ということだけでは通用しません。いわゆる事例性、疾病性の違いということで語られる部分ですが、「遅刻や居眠りが多くて困ってしまっている(=事例性)」という社員がいた場合、どのような疾患が考えられるのか(=疾病性)ということを考えていくわけですが、それぞれにどのようなことを考え、どう対応するのか、「職場が困っている」という問題をどう解決するのかという視点で考えることは重要になります。
また、「病院、とくに救急外来は患者さんから来てくれますので、勤務医時代はある意味、受け身でいい側面がありました。しかし企業ではそうはいかず、受け身では存在価値がなくなってしまいます。自ら価値を示し、社員からも産業医はこんな風に頑張っているんだなと思っていただけるようになりたいです」とも語っておられます。
いわば、「産業医への期待値」も企業によって異なるわけで、この点「自分はどこまでやりたいのか」とということを、企業選びの段階で考えておくことも大事なことだと思います。
「未経験ならでは」の悩み
藤並先生は産業医未経験とのことで、以下のように語っておられます。
「先輩の先生は東京にいらっしゃって、産業医の大ベテランです。臨床医時代は自分で判断してやってきましたが、今は何か迷うことがあれば、すぐに相談させていただくようにしています。なにしろ私は産業医としてスタートしたばかりですので、思い込みで走ってしまわないように意識しています」
この点、やはり「先輩産業医に相談ができる」という環境は、転職したばかりの頃というのは心強いものです。ですので、複数名の産業医が在籍している大企業などは積極的に求人応募を検討したいところです。
やはり、いくら臨床経験を積んでいたとしても、産業医としては「一年生」です。そもそも最初からなんでもうまく対応できてしまう、という方は珍しいと思います。私自身、多くの失敗から学んできました。
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