産業医に転職することを「静かな退職」と考えていると痛い目を見ます

「静かな退職(Quiet Quitting)」というのは、組織に所属していながら「まるで退職」しているかのような働きぶりをすることを言うそうです。「がんばりすぎない働き方」などと訳されることもあります。

必死になって上司から評価されようと頑張ったり、あるいはキャリアの上積みを目指し続けることとは対極となる働き方です。勤務医をされているドクターの中には、今、まさしくこのような状態で働いておられるかもしれません。

そのような方々がいわば燃え尽きたり、あるいは必死になって働こうとすることに嫌気が差した結果、「静かな退職」を選択しようとすることもあるでしょう。ですが、その「静かな退職」を目指して産業医へと転職をすると痛い目に遭うこともあります。

形骸化した仕事では立ち行かない

産業医の仕事と言えば、一昔前ですと「月イチの職場巡視と安全衛生委員会出席、長時間勤務者などへの面談」などだったりします。今でも、「法律で決まった仕事をしてくれればいいから。あとは余計なことをしないで」といった企業もありますが、最近は事情が変わりつつあります。

職場巡視と安全衛生委員会出席、保健師や人事労務担当者からの求めに応じて社員との面談を行い、簡単な記録を残して終わり…ということでは、企業からの求めに応じているとはいえないことになりつつあります。

というのも、メンタル不調者への対応や退職者の増加など、企業も頭を抱えているわけで、本腰を入れています。そこで「やったふりをする産業医」は求められていないというわけです。

問題解決型の産業医へ

与えられたタスクを淡々とこなす、「やった記録を残すだけ」の産業医ではなく、昨今、企業が求めているのは「一緒になって企業の問題を解決してくれる産業医」になりつつあります。

メンタル不調者で休職に至る社員をどうサポートするか、再休職をどう防ぐか、最終的には「メンタル不調者をどう出さないようにするか」という仕組みづくりなどについてアドバイスをしたり、自ら関係各所に働きかけてくれる産業医が求められているわけです。

たしかに、勤務医よりは労働時間も短く、当直・オンコール・問い合わせや呼び出しなどの時間外の拘束も少ないといった面はありますが、「静かな退職」を求めているのでは「お役御免」となってしまうかもしれません。

痛い経験

実際、私も一社目の転職で「静かな退職」を求めていた側面もあり、結果、しっかりと3年目を迎えられずに「次の契約更新はありません」と宣告されました。

単に与えられたタスクをこなす、「決められたことをやるだけで、企業の問題解決に一緒になって対応しようとしなかった」ことが原因であったと思います。

未熟で知識や経験もなかったことも問題ですが、それ以上に「産業医の仕事って、こんなものでしょ?」という甘い考えを抱いていたことが原因でクビになったのだと思っています。

こうした産業医をとりまく環境の変化や、私の経験をもとに「産業医になるのはやめた方がいい」というつもりはありません。ですが、「静かな退職」の場を求めて転職を考えるのはやめた方がいいのでは、と思っています。

少しでも興味があったり、「面白そう」と思われた方は転職を検討していただければと思っています。リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアには様々な企業の産業医求人があり、「この会社で働いてみたい」というところがありましたら、応募してみてはいかがでしょうか。

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