私が産業医になる上での動機というのは、あまり大きな声では言い難いことではありますが、「勤務医を続けたくない」ということがありました。
「勤務医/臨床医に向かない」というのは、自他ともに認める事実ではあり、それを前提として「もうこれ以上続けたくない」と後期研修医時代に見切りをつけたというのが主な要因です。
幸いにも早めの段階で気づかせてもらえたので、その点は不幸中の幸いだったと思っています。
ただ、かと言ってそのまま何もせずに暮らせるほどの資産があるわけでもないですし、不安定さと引き換えにドロッポ医として自由気ままに生活するほどの度量や思い切りの良さもないため、消去法的に「産業医」という道を選んだというわけです。
「産業医になる」動機について
結果、「産業医」として働くことの水が合ったということもあって、現在も続けられているというだけであって、最初から「産業医になろう」と思っていたわけでもありません。
ということからも、私の動機というのも珍しくないのでは、と思った次第です。こうしたことを前提に考えていくと、これから「産業医になろう」と考えている人の中にも、私同様「勤務医/臨床医が合わずに」別の道を選ぼうとされている方もおられるでしょう。
ただ、産業医を志す方で、「よく考えた方がいい」と思う方もおられます。それは、「臨床への熱意が冷めやらず、臨床医への思いが強くまだ残っている方」であったりします。
「臨床への思い」の強さ
そのような方がなぜ産業医になろうとするかと言いますと、40歳を境に「今の働き方が体力的にしんどくなってきていて、それならば産業医になろうと考える」というケースがあったりします。
あるいは、「一時的に業務負荷が高くなって燃え尽きてしまい、臨床医以外の道を探す(だが、実際は臨床への思いが残っている)」というケースがあったりします。
いずれのケースも、私の身近にいた産業医の話です。そこで思ったことですが、やはり「臨床に対する思い、スタンス」というのは産業医になった人の中でもそれぞれです。
産業医になったとしても、やはり「臨床への思い」を強く残されている方が、やはり早々に臨床へと舞い戻っていると思います。
なかなかそこの見極めというのは難しく、それこそ「産業医になってみないと分からない」というところはありますが、「週に1~2度の外来・当直バイトでは満足できない」という臨床熱の高い方はたしかにいらっしゃいますので、「本当は臨床を続けたいんじゃないのか?」ということはしっかりお考えいただいた方がよろしいかと思います。
「臨床に軸足を置きたい」という方はいらっしゃるでしょうし、ドクターであればやはりそちらの方が大多数だと思います。その場合、産業医という選択ではなく、「もう少しゆるやかに臨床を続ける」という選択肢の方が良い結果になると思います。
実際、そのような求人もありますし、私も産業医になる前にそのような相談をリクルートドクターズキャリア[PR]の転職エージェントにしていました。もし迷っていらっしゃる、ということでしたら、まずは相談をしてみてはいかがでしょうか。