「ドロッポ医師」が誕生するまでの3ステップ-きっとあなたはまだ踏み止まれる

常勤勤務医から「ドロップアウト」して、非常勤・スポットバイトなどで食いつないでいく医師のことを、「ドロッポ」「ドロッポ医師(ドロッポ医)」「泥医」などと呼ぶそうです。

「フリーランス」とは異なり、常勤医がそうした医師を呼ぶ際の蔑称、もしくはそのような医師が自らを自嘲するようにして呼ぶ際に使用するスラング的な言葉となっています。

「常勤医で、時間的制約やストレスに耐え忍びながら勤務を続けるより、短時間のバイトでそれより多いカネを稼いで生活したい」と皆が皆思うようだったら、大抵の医師が「ドロッポ医師」になるのではないでしょうか。ですが、実際にそうはなってません。

その事実から察するに、「ドロッポ医師」も自らその道を選択をしたというよりは、否応なしにそのような選択をせざるを得なかったのではないか、と思われます。多くの「ドロッポ医師」は、組織・集団に上手く溶けこむことができず、弾き出されるようにしてなっていくのではないでしょうか。

…などと偉そうに言っておりますが、私もドロッポ医師経験があり、もしくは人によっては現在も「ドロッポ医師」と呼ばれる状態であるので、「半強制的にその道を選ばざるをえなかった」と思いたいというところもあります。

病院や医局などで上手く立ち回れる能力があれば、私もそこから若くして出てしまうということもなかったはずです(笑)

そこで今回は、「ドロッポ医師が誕生するまでの3ステップ」と題し、私の失敗を晒しつつ他山の石としていただければと思って書いてみたいと思います。

「こうした医師になりたい」というビジョンがない

学生時代にまで遡りますが、まずは「医師としての将来的な希望やビジョンがない」ことが大本であるように思われます。どのような科に入り、どのような仕事をしたいのか、恥ずかしながら私にはそうした希望がありませんでした。

結果的に、「初期研修でいくつかの科をローテートで回り、どこか希望のところがあれば入れば良いや」と思い、初期研修医になりました。…が、そこでも強い希望はなく、漠然と「外科は体力的に無理だから内科医」という風に思っていました。

大変お世話になった先生がいたということで、呼吸器内科に入り、「内科認定医、内科専門医、呼吸器内科専門医の資格はとろうか」などと思っていました。ですが、それも強い希望というわけではありません。内科認定医を取得後に辞める際にも、別に専門医と呼ばれる資格にもそれほど強い未練はありませんでした。

結果的に産業医に落ち着くわけですが、学生時代にもっと「どのような医師になりたいのか」ということを考え、初期研修に臨めばよかったと反省しています。

初期研修を漠然とローテートし、「なんとなく選んだ」科で後期研修

これは上記にも関係するのですが、やはり強い希望、ビジョンがあるわけではないので、真剣に初期研修を行っていませんでした。興味のない科については、本当に指導していただいた上級医の先生方に申し訳ないほどヒドイ研修態度であったと思います。

結果、初期研修から後期研修に移るわけですが、そこでも言われたことをただやるだけ、文句を言われない程度に仕事をしているだけ、という患者さんにも申し訳ない状況でした。

そのような態度・意欲のなさはもちろん、上司にも伝わります。強い叱責は受けないまでも、小言を言われるようにもなり、次第に上司との関係をあまり持たないように、避けるようになります。医局の集まりもあまり顔を出さず、結果、どんどんと孤立した存在になっていきました。

悩みを1人で抱え、退職

後期研修に突入後、唯一の同期が異動でいなくなると、さらに孤立していき、結果、1人で「自分はこのまま仕事を続けていって、何の意味があるんだろうか?」などと考えるようになります。

さらに仕事をするモチベーションが低下し、上司からの小言は次第に多くなります。顔を合わせるたびに気分が悪くなっていました。その上、当直や深夜呼び出しなどが連日にように重なり、不眠症状を悪化させ、体調不良の中でついには退職を考えるようになりました。

カンファレンス中に人材紹介会社に登録し、すぐさまキャリアエージェントから電話が掛かってきて、驚いて中座したことを今でも覚えています。こうなる前に、ぜひまずは上司にしっかりと腹を割って話し合い、「辛いです、相談に乗ってください」と言い出すことができなかったことが悔やまれます。

以上です。
きっと、この3つの流れの中で、どこかで留まることはできたはずです。ですが、私は病院を辞職し、しばらくの”休養”期間を経て産業医となりました。今はこの生活にも慣れ、それなりに充実感を得ています。

ただ、もうしばらく内科医・呼吸器内科医を続けることもできて、そうするべきだったとも思うこともあります。後悔が全くないかと言えば、そうではありません。特に、悩みを1人で抱えていた時期に、上司に相談できていたら、留まっていたかもしれません。

また、転職するにしても、自分一人で考えていますと、視野が狭くなった状態で上手く行かないケースも多いと思います。もし失敗して「もう失敗を繰り返したくはない」ということでしたら、リクルートドクターズキャリアや、エムスリーキャリアの転職エージェントにまずはご相談いただいてはいかがでしょうか。

なお、現在「専攻医/後期研修医をやめてドロッポ医になろうか…」とお悩みということでしたら、

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をお読みいただければと思います。

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