面談の場で、社員さんたちが必死になるというその気持ちは分かります。「復職する際に、なんとか異動したい」「休職を繰り返していて、なかなか復職許可を出さない産業医や会社にGOサインを出させたい」「生活がかかってるから、早く復職したい」などなど、社員さんたちそれぞれの事情を抱えており、その希望や要求を通そうと必死になっていることもあります。
そんな中で、どんなに上司から酷い仕打ちを受けてきたか、とアピールされる方もおられます。時には過剰に話を持っていたり、あるいは自分のことは棚に上げて一方的に上司を悪者に仕立てあげようとしているという方もおられます。
ですが、そのようなある意味ウソに引っかかるのは、駆け出し産業医ぐらいなもので(私も引っかかってしまったこともありましたが)、「怪しいぞ」と思って鵜呑みにしたりせず、人事や上司に裏をとったり、あるいはその社員の勤務態度などを調べるといったことはします。
面談の場では「そうでしたか、大変でしたね…」などといった言葉をかけますが、その後、「あの社員さんのことですが…」と確認をとるわけです。
また、その延長線上で「泣き落としで同情を買おう」としている人もいたりします。それもまた一種の被害者アピールだったりしますが、「あまりに働かない、言い訳ばかりなのでたまらず上司が注意していた」結果、関係がこじれていたなんてことも少なくありません。
さらには、自分の要求がなかなか通らず、ついには怒り出して「訴えるぞ」なんてことを言い出すという人もいます。社員さんが興奮すればするほど、こちらとしてはどんどんと冷めていくわけで、「話にならないので面談スケジュールを改めて決めましょう」なんてことになるだけです。
恫喝すれば言うことを聞く、なんてことも期待薄だと思います。むしろドクター相手ですと、プライドの高い方も多く、逆効果になりやすいです。
結局のところ、ウソをつく、泣き落とし、激昂する…なんてことはある程度経験を積んだ産業医には通用せず、冷ややかに見ているように思います。何が問題点なのか、反省点はどのようなことなのか、今後どうするのか…ということを冷静に話し合える方がスムーズに交渉できると思いますので、ぜひ産業医面談にお越しの際には、「正攻法での交渉」を心がけていただければと思います。