「家族の悩み」だからこそ、自分の悩みよりも深くて辛いこともある【産業医マニュアル】

自分の妻や夫、あるいは子供についての悩みは、自分の悩み以上に深くて辛いこともあります。たとえば、「妻or夫が癌と宣告された」あるいは「子供が発達障害で、満足に幼稚園や小学校に通えていない…」などといったことです。

自分ではいかんともし難いことであり、自分の病気以上に苦しみ、辛さを感じることもあります。ですが、自分自身の病気・障害であれば、会社としても合理的配慮がなされるケースもありますが、「家族の」ということになると、話は別になってしまいます。

「子供は発達障害で、たびたび学校から呼び出される、もしくは学校への送り出しが必要で遅刻せざるを得ない」というようなケースもあります。このような場合、「事情は分かるけど、仕事は仕事だから。やってもらわなきゃ困る」というような対応をされてしまったり、仕事を肩代わりした同僚から冷たい視線を向けられてしまうこともあります。

ただでさえ苦しみ、ストレスを抱えているのにも関わらず、さらに追い打ちを職場からかけられてしまうケースもあるわけです。

あるいは、「妻に先立たれてしまい、残された幼い子供たちをどうするか。両親の支援もなかなか受けられない…」などの場合も、本人としては非常に困ります。妻の死という非常に辛い場面にも関わらず、「どう対応すべきか」ということを求められるわけです。しかも、出勤日は刻一刻と迫り、仕事に向き合わざるを得ません。

さて、こういったケースで産業医としてどう対応すべきか、という問題になりますが、やはり基本は傾聴・共感という姿勢で話を聞くことが必要になるのかな、と思います。寄り添う味方がいないと、ますます彼ら彼女らは追い詰められてしまうのではないでしょうか。

その上で、業務負荷軽減などの会社のサポート・公的な支援などを利用しつつ、対応を検討していくことが必要になるのかな、と思います。この点、産業医だけですとすぐに手詰まりとなってしまう可能性がありますので、様々な職種の方に相談しつつ話を進めていくことになると思います。

また、精神的なサポートをしつつ、症状に応じて受診勧奨も行っていくということも検討すべきだと思います。不眠症状や抑うつ症状など、面談のたびに聴取して増悪傾向がないかもチェックすることも大事です。

もちろん、全てのケースで上手くいくとは限りませんし、今まで苦い経験もしてきましたが、その中でも「最後まで寄り添う味方」のような存在であり続けることは産業医として重要なのではないか、と思います。

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