「草食系ブラック企業」で育った社員が背伸びして転職した後に待ち受ける悲劇に産業医としてどう対応すべきか【産業医マニュアル】

とにかく仕事が楽で、基本的に定時退社・休日出勤なしといった企業は、いわゆる「ホワイト企業」と言われるところに分類されるように思われがちです。

ですが、そこに落とし穴があり、「上司はろくに管理せず、育てようともしない」ため、スキル・知識が身についておらず、「年齢だけ重ねた社員」を増産してしまうという結果になるとのこと。

こうした企業を「草食系ブラック企業」と呼ぶそうですね。そうした企業で育った社員が、背伸びして大企業などに転職してしまうと、やはり悲劇が待ち受けていることになります。

実際、こうした草食系ブラック企業からの転職組の方々が、「脱落してメンタル疾患を疑われ、産業医面談を受けにくる」というケースは何度となく経験しており、「この現象、なんだろう?」と漠然と思っていた次第ですが、なるほど、「草食系ブラック企業からの背伸び転職」という現象なのか、と一人合点がいった次第です。

さて、ではこうした事態に産業医としてどう対応すべきかということですが、やはり

・まずは産業医としての一般的なメンタル疾患への対応(心療内科や精神科への受診勧奨、主治医意見の聴取、就業可否判定、必要があれば休養を勧めるなど)

・休業→復職が必要であれば、復職可否判定

・復職に当たっての環境整備、復職後のフォローアップの実施。

などが思い浮かびますが、元職場への復帰が難しいことも多々あり、やはり復職にあたっては人事との話し合いを行うことになっていきます。

ですが、人事としてもシビアに能力、仕事ぶりなどを再評価し、結果として退職を勧めることも多いように思います。「残っても辛い目を見るだけ」ということは火を見るより明らかですし、まだ30代前半ということでしたら、「もっとマッチする会社に転職したほうがいいね」という結論になりやすいのではないでしょうか。

ただ、入社して1年足らずで休職に至る方もおり、「いきなり転職を」というのはなかなか踏ん切りがつかないものです。そこで産業医としては、悩みや迷いを丁寧に傾聴してサポートしていき、ご本人の望む形に寄り添っていくしかないのかな、とも思います。

終末期医療の看取りに近い心境ですが、「味方やサポートしてくれる人がいない」という状態にしないよう、共感と傾聴を粘り強くしていくのが正解かな、と私としては思っています。

実際、こうした面談の中で、「先生、転職することにしました」と言って見送った社員さんの多くは晴れ晴れとした表情でしたので、これもまた産業医の意味ある仕事の一つかな、などと思ったりもします。

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