産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調」アンケート結果に見る「メンタル不調の原因」を探ることの難しさ

法人向け産業保健支援サービス会社であるfirst callが、産業医500人を対象に「従業員のメンタル不調」に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表しています。

産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」、1位は長時間労働ではなく「上司との人間関係」」という記事になっています。

その内容としては、

・産業医500人が回答した従業員のメンタル不調の原因、1位は「職場の人間関係」で400人以上が選んだ。また、その内の7割が「上司との人間関係」を、最も多い原因として挙げた。

・メンタル不調のサインでは、「遅刻や欠勤が増える」「表情が暗くなる」が上位だった。また、早期発見のために経営者や人事が行った方が良いことでは、「従業員との日常的な会話」「定期的な面談」と、変化にいち早く気づくために日頃から従業員と接する重要性が挙げられた。

・メンタル不調で休職した後の復職は、約半数の産業医が「どちらかというとうまくいかないケースが多い」と回答し、復職の成否を分ける要因には「職場による理解とフォローの有無」が1位に挙がった。

とのことです。

私が一番興味深いと思ったのは、「従業員のメンタル不調の原因」です。ランキングを列挙しますと、

1位 職場の人間関係

2位 長時間労働/業務過多

3位 パワハラ

4位 仕事の難易度/能力・スキル不足

5位 目標達成へのプレッシャー

6位 家庭の問題

7位 低賃金

8位 職場の設備環境

…とのことです。

「1位 職場の人間関係、3位 パワハラ、4位 仕事の難易度/能力・スキル不足、5位 目標達成へのプレッシャー」といったところは、やはり上司-部下の関係性の中で大きくストレスについて関係していると思われます。

それぞれ独立している項目かと思いきや、

「仕事の難易度が高く、能力・スキル不足がある」→「部下が目標達成ができなかったり、ミスを起こす」→「上司が叱責を繰り返す内にヒートアップ、部下は目標達成に強いプレッシャーを感じる」→「部下がパワハラと感じる」

といった一連の流れとなり、産業医として関わると、「どの段階で話を聞いたか」ということで印象も大きく変わってくると思います。

たとえば、流れの初期の段階で聞いていたら「仕事の難易度が高く、能力・スキル不足がある」となり、後半の方で話を聞いたら「部下がパワハラと感じる」となってしまうかもしれません。

また、部下だけに話を聞くのか、それとも上司・部下両方の話を聞くのかでも印象は大きく変わってきます。部下の言い分があるように、上司にも言い分があります。部下の話では、上司が殊更に「悪者」のように思われるケースでも、上司の言い分を聞いて「それは叱責されても仕方ないなぁ…」と思う場合があります。

このような要因もあるため、「何がメンタル不調の原因」と言うのは結構難しいかな、というのが私の印象でもあります。「部下の不調の原因を探ってほしい」という上司の方の依頼があったりもしますが、結局、よく分からない、本人もよく分かっていない、なんていうケースもあります。

なかなか一筋縄でいかないケースもあり、そうしたケースこそ、産業医の腕の見せ所、といったところでしょうか。

付記

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