産業医は従業員数50人以上になりますと、選任義務が生じます(安衛法第13条)。つまりは常時使用する従業員が49人までですと、選任義務はなく、「産業医がいない」状況であることがあります。
その場合、産業医面談を実施するといったこともできず、休職・復職判断などのメンタルヘルス不調者対応で困ってしまう、というケースも出てくると思われます。さて、そうした「産業医不在」の場合、どのように対応するのか、今回は書いてみたいと思います。
STEP1 旗振り役「衛生推進者」を選定
産業医、産業保健スタッフの確保がなされていない小規模事業場では、事業場では、「事業者は、衛生推進者又は安全衛生推進者を事業場内メンタルヘルス推進担当者として選任するとともに、地域産業保健センター等の事業場外資源の提供する支援等を積極的に活用し取り組むことが望ましい」とあります(労働者の心の健康の保持増進のための指針)。
よって、衛生推進者または安全衛生推進者をメンタルヘルスの旗振り役としてまずは指名することから始めるといいでしょう。衛生推進者が指名されていない場合は、あらためて指名してから、ということになるでしょう。
STEP2 職場復帰プログラムの策定
旗振り役が決まったところで、次は「職場復帰プログラム策定」に移りましょう。「職場復帰プログラム」とは、職場復帰支援についてあらかじめ定めた事業場全体のルールです。
衛生委員会での審議が本来は望ましいところですが、開いていないところも多いでしょう。その場合は、衛生推進者および管理監督者との話し合いの場を設けてはいかがでしょうか。
議論すべき内容としては、
・職場復帰支援の流れの確認(病気休業開始および休業中のケア、主治医による職場復帰可能の判断、職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成、最終的な職場復帰の決定)
・職場復帰可否の判断基準(生活リズムが整っている、定時勤務が可能、休職前の80%程度のパフォーマンスが出せる 等)
・プライバシーに配慮した個人情報管理について
・主治医との連携方法
・試し出勤制度の導入について
・職場復帰後における就業上の配慮(時短勤務、深夜業務の禁止など)
などです。
とくに、職場復帰支援の流れ、職場復帰可否の判断基準ははっきりとさせておかないと混乱を招くこともありますので、ぜひ明確化しておいた方がいいでしょう。主治医による職場復帰可能の判断については、意見書・診断書の発行を依頼することとする、といった手順についても、ぜひ話し合っておきましょう。
上記内容の詳細については、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」をご参考にしていただけるとよろしいかと思われます。
STEP3 必要ならば地域産業保健センターで相談
地域産業保健センターでは、産業保健に関する様々な問題について、専門スタッフが無料で窓口相談に応じてくれます。
職場復帰支援の枠組み作り、トラブル対応などでお困りでしたら、御相談いただくと解決の糸口が得られるかもしれません。
以上です。
特にSTEP2に関しては、やはりある程度の時間が要します。ですが、枠組みや規定を作ることは将来的に必要になってくるでしょうから、できるところから少しずつ決めていきましょう。