産業医面談において事実上の「退職勧奨・退職勧告」が行われてしまっているケース【産業医マニュアル】

そもそもの前提としてですが、産業医に「退職勧奨」や「退職勧告」を行うような権限もありませんし、社員さんに従う法的根拠もありません。

ですが、産業医が極端に企業側寄りになってしまい、復職を阻んで社員さんが退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまうケースもあったりしました。実際のところ、それで訴訟問題に発展することもありましたね(「ブラック産業医」復職認めず、退職に追い込まれた…元従業員が提訴 – 弁護士ドットコム)。

ただ、実際のところ事実上の「退職勧奨・退職勧告」が行われてしまっているケースもあるようです。少し前の話になりますが、外資系企業で、長時間勤務や進行中のプロジェクトで苛烈なプレッシャーを感じていたとある社員さんが通勤中、「電車に飛び込んでしまいたくなった」ことを心配して産業医に相談したそうです。

その企業の産業医は、恐らく同様のケースを多数知っており、なおかつ受診勧奨や就業制限などでは立ち行かないことを知っており(専門性の高い特定業務の中途採用であって事実上、異動もできない)、ボソッと「ここはやめた方がいいよ…体を壊すよ、もしくは本当に電車飛び込んじゃうよ」とつぶやいたそうです。

その言葉に、社員さんも「やめるしかないよな…」と思い、退職を選んだとのこと。もちろん、なんら法的拘束力のない産業尾の「つぶやき」ですが、社員さんにとっては事実上の「退職勧奨・退職勧告」になっているのではないでしょうか。

上司に相談しても、業務量・業務内容に変化はなく、プロジェクトの期日は迫ってくるだけ。このままでは倒れるか、もしくは本当に電車に飛び込んでしまうかもしれない…と思ったならば、それはやはり退職を選ぶしかなくなってしまいますね。

本音のところ、「受診勧奨の通りに精神科受診して、休業して…それで復職して本当に上手くいくのか?」と問われれば、やはり難しいところですね。専門性の高い特定業務の中途採用であった場合、「採用時に、できるって言って入ってきたんでしょ。上手くできなきゃ辞める以外ないよね」という企業側の理屈も分かります。ですが、産業医としてはそれを「つぶやき」で代弁するべきではなく、サポート側に回るべきでしょうね。

ついつい雑談ベースで、会社の内情を踏まえたぶっちゃけた話をしてしまう気持ちも分からなくもありませんが、産業医として気をつけたいと改めて思った次第です。

もしこうした産業医業務にご興味をお持ちのドクターがおられたら、ぜひ産業医となることをご検討いただければと思います。その際には、私も転職のたびにお世話になっておりました、人材紹介会社の「リクルートドクターズキャリア[PR]」「エムスリーキャリア」にご相談されてはいかがでしょうか。

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