産業医として、メンタル不調者との面談を行うことが多いわけですが、その中で「3年近く、イヤな上司の下で耐え続けていた」という方がおられました。
とにかく反りが合わず、年代によるところも大きいかとは思いますが、パワハラに該当すると思われるような発言もしてしまうというその上司の下で耐え続け、ついには適応障害と診断されて休職されたという方です。
どうやら異動希望も出されてれはおらず、その理由を聞くと「他の部下や上司は良い人だから、異動はしたくない」とのことです。ですが、不眠症状や抑うつ症状に悩まされ、ついには「出社できなくなる」というほどに追い込まれていました。
「耐える」選択をしてしまう理由
私自身、後期研修の時には勤務医として働くこと自体に加え、医長との人間関係をこじらせてしまって退職するに至っています。産業医になってからも、いくつか企業を転々としていますが、その中でも上司との人間関係に悩まされるということはありました。
私の経験を踏まえますと、上述のメンタル不調の社員さんに関しても、「そう簡単には辞められないよな…」というその気持ちがよくわかります。転職活動はやはり大変で、その作業をイチからまたやらなければならない、そして多くの決断をしなければならないですし、転職先が今より良い環境とも限りません。
そのようなことを考えると、イヤなことがあっても「今の職場で耐えるか…」ということをつい選択しがちです。結果、ズルズルと1年以上経っていた、ということはありがちであると思われます。
どこまで耐えるのかの基準
簡単に「辞めればいいじゃん、転職先はいくらでもある」とおっしゃる方もおられるとは思いますが、私はその意見には賛同しかねます。転職を繰り返すことでキャリア上のデメリットはありますし、転職をすることの労力を考えたらやはりトータルでのコスパはよろしくないと思われます。
自分にとっての完璧な職場がないことからも、ある程度の我慢、という部分は必要になることは否定できないと思います。その点、心身の不調が出ない範囲で、その仕事で「何をしたいのか?」「何を求めて働くのか?」という目的と、その我慢とを天秤にかけるということは必要になるになるのではないでしょうか。
ただ、その仕事に対する目的は時間の経過とともに変わっていきますし、我慢できるキャパもまた変わります(プライベートでの状況にも左右されます)。ですので、自分に対して問いかけ直すことも大切なことかな、と思っています。
以上、今回の面談で私が改めて思ったことです。
仕事に充実感を感じていますか?満足していますか?そしてその一方、仕事で辛く感じる部分はどんなことで、どの程度それを許容できるのでしょうか?
もし、その天秤が「辛い方」に傾き始めているようでしたら、やはり転職を考えてみて、少しずつ動き出すことも大切かな、と思います。リクルートドクターズキャリア[PR]で求人などを紹介してもらっておくと、いざという時にすぐ動き出せますので、余裕がある内に相談をしておくこともご検討いただければと思います。

