産業医に転職するならば「若手」の時にすべきであると私が考える3つの理由

私が産業医に転職をしたのは、後期研修医の時でした。内科認定医を取得し、「さて、次は専門医資格だ」と思っていたわけですが、そこで「あ、臨床医向いていないな」と気づいてしまったということもあって産業医に転職しました。

さて、その時の周囲の反応というのはどうだったかと言いますと、「産業医?それは臨床を続けて年とってからでもできるでしょ。産業医になるなら、もっと年とってからでもいいんじゃないの?」という意見が多かったです。

今もなお、「臨床医のセカンドキャリアとしての産業医」というイメージをお持ちの方は多いと思います。

ですが、私としては産業医に転職するのならば、若手の時にしておくべきであると考えています。その理由について、今回は書いてみたいと思います。

理由1 適性とやり直し

どのような仕事であっても、「興味がある」ことと「適性があるか否か」という問題は別です。どんなに野球が好きであっても、誰でもプロ野球選手になれるものではないのと同様で、興味があろうが向いてなければその仕事を続けていくのは難しいものです。

実際、一度は産業医になったものの、「やっぱり向いてないな」ということで臨床医に戻るというドクターもいらっしゃいます。ですので、産業医をやってみて、一社目、二社目と勤務したものの、「やっぱり向いてないな」「思っていたのと違うな」ということであれば、臨床に戻るというのも一つの選択です。

ただ、こうした「お試し」ができるのは若い内だからこそだと思います。臨床経験を積めば積むほど、そして家庭を持っているといったことですと、産業医への転職というのはますますしづらくなっていきます。

このあたり、やはり産業医という仕事に興味を持っていて、「産業医を経験してみたい」ということでありましたら、早めに転職をしておくことをおすすめしたいと思います。

理由2 臨床で活きる産業医経験

私自身、内科の外来診療を行っていて感じたことですが、「産業医としての視点」を持っていることで臨床に役立つこともあります。

内科医ですと、なかなかメンタル不調の患者さんとの接点は少ないものですが、産業医をやっておりますと、面談でメンタルの問題を抱えた社員さんにしょっちゅう対応することになります。

内科の外来にやってこられた患者さんの暗い表情などでピンときて、「最近、仕事はどうですか?夜、よく眠れないといったことはありますか?」と質問をして、そこから堰を切ったように会社で大変な思いをしているということがあったりします。

また、通院をしながら仕事を続けるという、患者さんの立場に立って考えるということもとても大事なことだと気付かされました。こうした「気付き」を与えてくれたのも、産業医として働き始めたからだと思います。

もし産業医になったとして、再び臨床に戻るということがあったとしても、このような
産業医の経験が臨床で活きるということもあると思います。この点からしても、若手の内に経験しておくことは決して無駄ではないと思います。

理由3 転職のしやすさ

産業医の転職で考えますと、「若手の方が実は転職しやすい」と私としては思っています。この理由は企業側の立場で考えると分かるのですが、まずは「コストを抑えられる」という点があります。

医師も中堅以降ですと、やはり年収は高めに希望してくる傾向にあります。この点、若手医師の方が「安く雇える=コストを抑えられる」というメリットが企業側にあるわけです。

また、「若手医師の方が長く勤務してくれる可能性がある」ということもあります。60歳まで勤務することを想定した場合、50歳のドクターと40歳のドクターだったら、やはり40歳のドクターの方が10年長く勤務してくれる可能性があり、新たに産業医を探すコストがかからないということになります。

もちろん、若手であろうと途中で退職する可能性はあるわけですが、「長く勤務してくれる医師を希望しているため、若手医師を」と考える企業は結構あります。

あとは若手の方が横柄な態度をとることも少なく、相談にも乗ってもらえそう、よく話を聞いてくれるのではないかと考えている企業もあります。こうした点からも、「転職のしやすさ」で言うと、若手の方に軍配が上がるのではないかと思います。

以上です。
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