私が心身ともに限界を感じて「後期研修をもう辞めよう」と考えていた時に、「もう病院で働きたくない」と考えていました。
当時、精神科のドクターで、「これからはクリニックのコンサルティング業務で働く」とブログを書いておられる方がいて、それに感化されていたというのもあるかもしれません。「とにかくもう、病院では働きたくないんだ」と思い、どうすればそれが実現できるか、と模索していました。
そこで私が選んだのは「産業医」という道でした。結果、どのようなことになったか、そのことについて今回は書いてみたいと思います。もしこれから「病院で働きたくない」という思いから産業医になろうとお考えの方にとって、ご参考になれば幸いです。
「勤務医」との働き方の違い
勤務医としての働き方に、私はとにかく「合わなかった」人間ですので、産業医になって働き方がガラリと変わったことは非常にありがたかったです。
この点、勤務医としての働き方に辛さを感じていて、「当直で仮眠をとることができずにしんどい…」「時間外に電話をかけてこられたりするのがとにかくストレス」というふうにお感じのドクターにとっては、享受できるメリットは大きいと思います。
産業医として求められること
メンタル不調の社員がいたとして、企業の人事から「面談をお願いします」と依頼されたとします。もしあなたが産業医だとして、どのように対処するでしょうか?
面談をして、まずその社員の話を聞く→まだ精神科受診をしていないから、受診勧奨を行う→はい、おしまい…で一件落着としていいのでしょうか?たしかに、「面談をお願いします」という額面通りの対応だとは思いますが、それだと企業側のニーズを半分も満たしていないのではないかと思います。
メンタル不調の社員が、どのようなところにストレスを感じているのか。ストレス軽減のためにどのような措置をとるべきなのか。このまま勤務を継続していいのか、業務量や内容はどのようにすべきのか。受診後に対応としてはどのようにすべきなのか…というところを、やはり企業側も知っておき、対応を考えたいところでしょう。
このあたりの情報や判断を、「言われなくてもフィードバックする」といったコミュニケーションをとってくれるといったことを産業医としては求められています。報告・連絡・相談という社会人としては最低限必要なことですが、私はしっかりと身につけることなく産業医になってしまい、当初は苦労しました。こうした社会性があまり身についてないとなりますと、「学び直し」が必要になります。
相談事、仕事を依頼された時に、「相手は何を求めているのか」ということをしっかりと把握し、それに応える。そうしたことが今までできてこなかったということですと、やはり産業医になりたてですと苦労する可能性はあります。
「柔軟性」が必要なことも
産業医として対応する際、常に画一的に「こうすればいい」「これが正しい判断」ということにはならないこともあります。様々な立場の社員さんがいますし、また企業側の対応もまたそれぞれのケースで異なることがあります。
私は産業医という仕事の「面白いところ」と思っていますが、中には「ケースごとに対応が異なる」といったことが「我慢ならん!」と思われるドクターもおられるかもしれません。
キャリアの「リスタート」
産業医を始めるにあたって、やはり今までの臨床経験とは異なり、「これからリスタート」と考えていただいた方がよろしいかと思います。
「自分はある程度、経験を積んできたドクターだ」という変な自負があったりしますと、プライドが邪魔をして、わからないことや対処が難しいこともごまかしてしまったり、不遜に思われてしまうということもあると思います。
企業ごとに「合う・合わない」はある
病院やクリニックに勤務して、「自分に合っている/合っていない」と感じることはあると思いますが、同様に企業でもカラー、社員の年齢層、働きやすさ・環境などは大きく異なります。
だからこそ、転職しても「うわ、この会社合わないぞ。働くのしんどそうだな…」と感じるということはあるかもしれません。その時に、特に未経験~初心者ですと「産業医、向いてないかも…」と思ってしまいがちですが、そんな時こそ「別の会社も試してみてからにしよう」と思っていただいた方がよろしいかと思います。
以上です。
新天地で働くとなりますと、やはりそれなりに「下積み」期間が必要であり、「郷に入っては郷に従え」であり、自らその職場に溶け込むこともまた必要になります。
ただ、私としては「病院ではもう働きたくない」という希望をかなえる上では、うってつけの転職であると思いますので、私と同様の希望をお持ちでしたら、ご検討いただいてはいかがでしょうか。
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