産業医として、休職していた方の復職可否判定を行う面談を行う機会は多いわけですが、そこで「日中の活動量」を知りたいと思うことが結構あります。
通勤・勤務はやはり体力を使うわけであり、休職して自宅療養をしていた方ですと、かなりハードに感じることも多いと思います。実際、「復職して最初の一週間は、本当辛かった」という言葉を聞くことも多いです。
私が「外出や散歩など、体を動かすことはしてます?」と質問すると、ほとんどの方が「はい、買い物や散歩には行くようにしてます」と答えるわけです。それも当然のことで、復職したいという方が、「家でゴロゴロしてますね」とはやはり答えづらいわけです。
スマホは嘘をつかない
そこで私は最近、「どれぐらい歩いていたり、外出されていたりしているのか参考にさせていただきたいので、スマホの歩数記録を見せていただくことはできますか?」と聞いています。
それで実際、歩数記録を確認しますと、「5千歩以上歩いてるのは一週間で1~2日程度。他の日は家にいて、1000歩以下で全然歩いていない」なんてことが分かったりします。
そのような場合は、「ちょっと通勤の練習をしてみましょうか。朝、会社の付近まで来てみるのを一週間やってみて、それからまた面談をしましょう」と提案したりしてます。
産業医と社員、「解釈」の違い
「通勤・勤務に必要十分な活動量はありますか?」という質問に、産業医としては「コンスタントに毎日、ある程度の運動量がある」ということを期待しているわけですが、一方で休職中の社員は「用事がある日は外に出られてるし、その日は十分に体を動かせているから問題なし」と解釈しているかもしれません。
やはりそうした解釈の違い、あるいは齟齬があるか否かは、実際に記録を見てみないと確認できないように思います。
もちろん、スマホを見て「ほらな、全然ダメじゃん」と言うわけもないというのは前提で、「これだと復職してから大変かもしれませんね。もう少しだけ体を動かす練習してみましょう」といったアドバイスの意味で「スマホで確認させてください」はアリなようにも思います。
強制はもちろんダメ
今のところ「スマホで歩数記録を確認させて下さい」と言って、「イヤです」と断られたことはないですが、当然のことながらそれも「許可・同意」が必要であり、「プライベートなことなので、お断りします」と言われたら、それはすぐに引き下がる必要があると思います。
ただ、産業医から言われて「イヤです」とはなかなか言えないのかもしれない、という気持ちは斟酌して、戸惑い・躊躇いが強いと感じた方がおられたら、それは「イヤならば大丈夫ですよ。あくまでも参考データの一つですので」と言う必要はあるのかな、と思っています。
こうした配慮はある程度必要だとは思いますが、「復職してからも問題ない程度の活動量か否か」というのを判断する上で、歩数記録の確認は結構便利だと思った次第です。