勤務医の大半はハードワークと考えられますので、ストレスを抱えてうつ病などのメンタル疾患を発症し、退職をよぎなくされる、ということもあると思います。
もちろん、先生方は疾患についても知識や理解があり、どう対処すべきかご承知とは思われます。精神科の先生をはじめ、釈迦に説法、と思われますが、私も産業医としてメンタル疾患を抱えている社員さんと数多く面談をしておりますので、その経験をもとに「病気を抱えながらの転職活動」という視点から「医師がうつ病となってからの転職を成功させるための5つのポイント」について書いてみたいと思います。
とにかく焦らない
産業医面談をしていて気づいたことですが、療養に入りますと、不安や焦りを感じるという方が非常に多いです。特に、それまで忙しく働いてこられた方はなおのこと、「自宅でじっとしている」ことに不安感・焦りが募っていくようです。
ですが、療養が十分でない状態で転職活動や復帰をしても、やはり途中で息切れして再び休職、という道を辿ることになりかねません。まずは焦らずにしっかりと療養することが必要だと思います。
基本的には、「夜寝て、朝しっかり起きることができるといった生活リズムが整う」「外出ができて、散歩や買い物などが無理なくできる」「昼寝をせずに一日体力がもつ」といったことができているかどうかは確認しましょう。
自己判断だけを過信せず、主治医と相談をする
自分も医師ということもあり、ついつい自己判断をしてしまいがちです。ですが、やはり自分や家族のこととなりますと、ついつい客観的な判断ができない傾向にあるのではないでしょうか。
そこで重要なのが、第三者的な立場から症状や経過を見てくれている主治医と十分に相談し、「もう転職活動をしていいでしょうか?」といったことについて、意見を求めましょう。そこで難色を示されるようでしたら、やはり時期尚早ということだと思います。
どのような条件ならば勤務できるかを十分に検討
主治医の許可が出た上で、今度はどのような条件ならば勤務できるかについて検討しましょう。やはり、多くの方が発症前と同様の働き方は難しいのではないでしょうか。
たとえば、時間外勤務はどの程度可能なのか、当直やオンコールの担当、オベなどの体力を要する業務についてはご自身の中で見直しを図ることをお勧めしたいと思われます。この点、上記同様、主治医と相談することも重要です。
業務の内容、そして量はどの程度可能なのかということを検討し、転職する上での条件が決まったところで、リクルートドクターズキャリアや、エムスリーキャリアなどの転職エージェントに、希望条件の求人があるか問い合わせてみてはいかがでしょうか。
「こんな条件、無理だろう…」と思ってしまいがちですが、転職エージェントに相談してみると、意外に求人があったり、もしくは交渉をしてくれたりします。まずは諦めず、相談してみましょう。
採用面接で打ち明けることについて
昨今、採用面接では病気のことなどは触れるべきではないといった風潮になっています。そのため、もしかしたら病気療養していたこと、通院していたことなどについては触れられないかもしれません。
ですが、メンタル疾患という特性上、再発・再燃する可能性はあります。その時に理解を得るためには、まず相談をあらかじめしておく方がよろしいかと思います。
また、入職にあたってある程度の合理的配慮(当直の免除や回数を減らす、担当する入院患者の数を減らすといったことなど)を求めるならば、やはりカミングアウトしておく必要があると思っております。
基本的には採用面接では打ち明け、「現在では体調も快復しており、主治医からも再び働き始めることに許可は得ていますので、問題なく働けると思います。しかしながら、いきなり以前と同様の働き方で開始することに不安がございますので、こういったご配慮をいただけますと幸いです」などと伝えることをオススメしたいと思います。
「相談する」ことをためらわない
メンタル疾患を抱えておられる社員さんの傾向として、「問題を自分で抱えてしまう」ことがあると思っています。逆に、誰かに相談したり、助けを求めることが上手にできている人はメンタル疾患にはなりにくいと思われます。
転職活動は、やはり上手くいくことばかりではありません。タイミングによっては、希望条件の求人がなかなかなかったり、内定がもらえなかったりすることもあると思います。
そんな時は、ご家族に相談することもいいでしょうし、あるいはリクルートドクターズキャリアや、エムスリーキャリアなどの転職エージェントも相談に乗ってくれるでしょう。一人で悩んでストレスを抱えるのではなく、できるだけ相談することで解決するようにしましょう。