産業医として、若手医師の「もう辞めてやる!」という突発的な退職に思うこと

産業医として、メンタル不調をきたした社員さんと面談をする機会も多いわけですが、仕事の悩みを抱えていながらも、「上司と相談をしてみましたか?」と質問をすると「いや、してないです」というケースが結構あります。

理由を聞いてみますと、「苦手な上司で、そもそもそんなにコミュニケーションをとっていない」「今までの対応を考えると、相談をしても無駄」などといった返答が多いパターンとなっています。

メンタル不調が進行し、適応障害やうつ病との診断の下に休職したり、あるいは退職という選択をする方もおられるわけですが、そうなる前に「もう一度、上司と相談してみませんか?」と私としてはお勧めしています。

上司と部下の関係性と悪循環

前提としてですが、上司は思った以上に部下のことを分かっていません。それが普段からあまりコミュニケーションをとっていなかったり、嫌いで避けていたりすればなおさらです。

このあたり、管理職の経験があったりすれば分かるところですが、部下の視点からしか見ていないと、なかなか分からないところであったりします。そうなりますと、部下がどれほど大変な思いをしているか、どれほど追い詰められているのか、ということが上司は分かっていません。

さらには、その部下にまつわる「噂話」が聞こえてきますと、本人の事情などが理解できていませんので、その噂の方を上司は鵜呑みにしてしまうわけです。そうなりますと、部下に対して噂を根拠に注意したりしますので、ますます部下は「うわ、できるだけ接点を持たないようにしよう」と避けるようになります。

こうした悪循環から、ますます上司と部下の間に亀裂が深まり、お互いに「一緒に働きづらい」と感じてストレスを溜めていくことになっていきます。

頭に入れておくべき「前提」

これは、産業医として面談をすることでよく聞く話ではありますが、私自身が経験したことでもあります。結果、私は後期研修医をドロップアウトすることとなりました。

その当時のことを振り返りますと、「もっと腹を割って上司と話し合っておけばよかった。自分がどう感じ、どういうストレスを溜めているのか、伝えて相談すればよかった」と思います。この後悔の念から、面談をした社員さんに「ダメ元で、もう一回、腹を割って話し合ってみませんか?」と提案しているところもあります。

話し合う上でのポイントとしては、「上司は部下が思っている以上に、部下のことをまるっきり分かっていない」ということです。その前提に立って、話をすることが大事だと思います。

ダメ元での話し合い

休職に追い込まれてしまう前、退職する前。そんなタイミングで、「ダメ元で話し合ってみよう」ということを考えるのは大事なことだと思います。後々になって振り返って、後悔するぐらいだったら、ぜひ話し合っておきましょう。

ただ…全てがそれで解決するわけでもないのが残念なところではあります。理解ある上司ばかりではないということもあったり、勤務する上で配慮をすることが十分にできないこと、決定的にその仕事とミスマッチである…悲しいかな、そうしたことが起こり得るわけです。

そうした場合は、やはり転職を考えたほうが良い、ということになると思います。医師の場合、専門職という特性上「異動ができる」というわけにもなかなかいきません。となりますと、転職で環境を変える、あるいは転科や、産業医のように臨床医以外の道を探るということももしかしたら必要かもしれません。

ただ、転職と言っても、若手医師だと特に「初めてでよく分からない」ということが往々にしてあると思います。そこではぜひ、キャリアエージェントなどに相談をすることが望ましいと思います。転職ということで言えば、なかなか先輩や同僚に相談しづらいでしょうから、そこはリクルートドクターズキャリア[PR]や、医師転職ドットコム[PR]などに登録して、キャリアエージェントと相談してみてはいかがでしょうか。

【2024年版】「専攻医/後期研修医をやめて産業医」になろうと考えている若手医師へのアドバイス
私自身、最初から産業医を目指していたわけではありません。そもそもは内科の後期研修医になり、「まずは専門医資格を取得して開業しよう」と考えていました。ですが、その途中でドロップアウトし、そこからは産業医として働いております。だからこそ、同じよ...
【2024年度版】「専攻医の途中で」転職しようか迷っている若手医師がチェックすべき5つのポイント
私は後期研修医の時にドロップアウトしてしまい、勤務していた病院を退職してから産業医になりました。「臨床医(勤務医)に向いていない」と薄々は自覚がありましたが、それでもそれを認め、「よし転職しよう」と考えるに至るまでは長い時間がかかりました。...
タイトルとURLをコピーしました