産業医が本業なら「労働衛生コンサルタント」資格を取得しておくべき理由

産業医を本業とするつもりならば、「労働衛生コンサルタント」の資格は取得しておくことでメリットが大きいと思います。

本業が臨床医で、産業医も兼業しているということでしたら話は別かと思いますが、私同様、常勤産業医として勤務している場合はやはり取得しておく方が望ましいと思われます。

今回の記事では、そんな「労働衛生コンサルタント」という資格のメリットについて書いてみたいと思います。

「労働衛生コンサルタント」資格とは

そもそもこの労働衛生コンサルタントの資格とは、厚生労働省が認定する国家資格となっています。この点、やはり国家資格であるというのは資格として「箔がつく」大きなポイントかと思います。

「保健衛生」と「労働衛生工学」に区分が分かれておりますが、産業医が取得すべきは「保健衛生」の方となります。大半の産業医は「保健衛生」のみで、仕事で使う、もしくはよほどの資格マニアではないと両方とろうとは思わないのではないでしょうか。

「更新不要」な資格

こちらの「労働衛生コンサルタント」の資格は更新が不要であり、なおかつこの資格があればそれだけで産業医の要件を満たすため、「認定産業医の更新から解放される」ということでも有名な資格です。

この点、よく誤解されているところでもあるのですが、認定産業医も一度資格を取得すれば、更新しなくても産業医の要件を満たします。ですので、このあたりの意味での価値はあまりないように思います。

ですが、転職する際などで「認定産業医」の証明書を企業へ提出しなければならず、有効期限切れであると格好つかないということもあって、更新しているというドクターもおられるのではないでしょうか。

転職活動と資格

「労働衛生コンサルタント」資格の価値は、転職活動で役に立つことがあります。「ことがある」というのは、この資格のことを採用に関わる人が知っていれば、という前提があるという意味です。

「書類選考が若干通りやすくなる」程度の効力であるということもあれば、「合格率3割ぐらいだし、この資格を持っている人は実は凄い」と認めてくれる場合もあります。

実際、私が三回目の産業医の転職活動をしている際、採用担当の方がこの資格のことをよく知っており、内定を出した大きな要因だったと聞きました。

このあたりはまさに「資格の価値を知っている人が採用に関わっているかどうか」というところにかかっており、まさに「運」とはなりますが、転職活動で有利になる可能性はあります。

あとは単純に、私のように経歴書がスカスカで寂しいところで、「書くことが増える」というのはありがたい面ではあります(笑)

筆記試験免除という特典

産業医がこの労働衛生コンサルタントの試験を受ける際、一次試験である筆記試験を全科目免除してもらえる場合もあります。

日本医師会が開催する「産業医学講習会」(間違える方が多いようですが、認定産業医の資格取得時の講習ではなく、更新の際に受講する講習会です)、もしくは産業医科大学が開催する「産業医学基本講座」(こちらも、認定産業医の資格取得を目的とした産業医学基礎研修会とは異なります)を受講することで、筆記試験の全科目を免除され、「二次試験から口述試験のみを受ける」ことが可能となります。

いわば産業医はこうした優遇を受けられるため、労働衛生コンサルタント試験を受けようと思うドクターが多いというわけです。

ですので、おすすめとしては、認定産業医の有効期限である5年以内に日本医師会が開催する「産業医学講習会」を受講しておき、筆記試験が免除された上で労働衛生コンサルタントの口述試験を受けるという流れです。私自身もこの方法をとり、認定産業医の更新をしつつ労働衛生コンサルタントの資格を取得しました。

試験勉強自体に意味がある

私は機会がないとあまり自学自習をするタイプではありませんので、「試験勉強」として半ば強制的に勉強する機会があったのは非常にありがたかったです。

実務として「なんとなく知っている」といった知識の再確認や、「日頃、学ぶ機会もなかった」という知識を吸収する機会があり、産業医としてレベルアップするためにこの受験は非常に良い機会となりました。

もちろん、合格するに越したことはありませんが、産業衛生分野について「勉強をする」という点では、産業医を本業とされるドクターにとってはとてもおすすめできる資格であると思っております。

なお、労働衛生コンサルタント試験の勉強法についてまとめた『産業医のための労働衛生コンサルタント口述試験対策マニュアル』、頻出の問題についてまとめた『まずはこれだけ!労働衛生コンサルタント口述試験対策問題集』を電子書籍で出版しております。

もし受験されるということでしたら、お読みいただけますと幸いです。

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