医師が「退勤後や休日の問い合わせ電話や呼び出し」が苦痛であるという理由で転職しても良いと思う

私が産業医として勤務する企業でも、トラブルが発生すれば社員さん(事務部門を除く)は「24時間365日、連絡や呼び出しがある」状態です。

現場にいるスタッフや顧客からの連絡を受け、土日も返信や折り返しの電話をしなければならないということも結構あり、「私も勤務医時代、そうだったなぁ」と思っていたりします。

私は映画館に行くことが好きなのですが、「映画1本分、2時間」の間に連絡が来るのではと気になってしまい、なかなか新作映画を見ることができずにいました。

この勤務形態はやはり社員さんから不評で、「休日なのに気が休まらない」「常に連絡がないか、スマホが手放せない」といったことを面談の時に聞いたりします。そうしたことばかりが原因ではないと思いますが、離職率が高く、5~6年で転職…という方が多いように思われます。

当番制度ではなく主治医制度が一般的な病院

話を勤務医の側へ戻しますと、ドクターは「病棟の看護師さんからの問い合わせ、場合によっては呼び出しは当然」という状態にあるところが多いのではないでしょうか。

中には入院患者さんの情報をしっかりと共有し、オンコールを決めてその当番のドクターが対応するといったところもあるようですが、「主治医が基本的には問い合わせや呼び出しに対応する」というところが一般的であると思われます。

そうなりますと、自ずと「退勤後や休日であろうが連絡が来る可能性がある」わけです。

若手ですと、急変の可能性が高い患者さんを土日に任されてしまうなんてことも多かったりします。そうすると問い合わせや呼び出しの可能性は高まってしまうわけですね…

「つながらない権利」を主張しづらい勤務医

退勤後や休日には、「職場から連絡をされない」という権利を主張される方もおられます。いわゆる「つながらない権利」であり、退勤後や休日にしっかりと心身ともに休めるためにはそうした権利が必要、という理屈は私としては大いに納得するものであったりします。

ですが、上記のような主治医制度の病院での勤務医は、なかなかそうした権利を主張することは難しかったりします。というのも、オーダーした指示内容が誤りであったり、患者さんの状態が急に変わる可能性もあったりします。

そうした情報をせっかく看護師さんが伝えようとしているのに、「もう退勤したから後は知らん。当直医に聞いて」と無碍にするのは何事という風潮であるでしょうし、患者さん本人やご家族からしたら「そんな無責任なことでは困る」と思われる心情も分かります。

自分が病棟に不在の時に連絡をもらえることはありがたいことだというのは重々承知しておりますが、それでもプライベートはゆっくり休みたいという気持ちもあるわけで…

結局は「どこまで許容できるか」という問題か

「つながらない権利」を主張できず、「問い合わせの電話や呼び出しにしっかり対応する」ことができるか否かというのは、結局ドクターのストレス耐性や体力、あるいはそれを家族がどこまで許容できるのかといった問題になってくるのかな、と思われます。

「医師たるもの、そうした責任を持ち、緊張感を常に持っていることで高給取りなんだろ?対価をもらってるんだから、それぐらいやりなよ」と言われてしまえばそれまでですが、それが最初はできていても難しくなってきたり、あるいは最初から難しいという私のような人間もいます。

看護師さんからの電話に不機嫌に出てしまったり、あるいは電話に気づいていながら「出られない」ということが続くななんてことがあるかもしれません。ストレスを大きく感じたりしている場合には、やはり「つながらない権利」が尊重される職場への転職を検討してもよろしいのではないでしょうか。

「希望条件」の選び方は自由であっていいはず

ついつい転職の時に、「こんな条件の病院なんかないよなぁ」「こんな希望条件を言ったら、転職エージェントは呆れてしまうかもしれない」なんて思いがちです。実際、私も「こんな若手で当直やオンコールがイヤなんて言ったら、怒られてしまうのでは…」なんて思ったものです。

ですが、決してそんなことはありません。他の人が「そんなのやって当然でしょ」と思うような業務が、自分にとっては耐え難いものだったりすることもあるわけです。「時間外の電話や呼び出し対応」が苦でもないという人もいますが、耐え難い苦痛である人もいます。

転職における「希望条件」の選び方は、もっと自由であっていいはずであると思います。他人に引け目を感じる必要もないですし、「働きやすい環境・条件」を求めて転職をすることも自由です。

もしお悩みということでしたら、まずはリクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアに登録し、キャリアエージェントに「転職についての本音の部分」を話してみてはいかがでしょうか。

ドクター側は無料で転職支援を受けることができますので、ぜひ希望条件に合った求人を紹介してもらいましょう。

産業医になって痛感する「勤務時間外につながらない権利」の尊さ
ドイツ在住のフリーライター・雨宮紫苑さんの記事ですが、「欧米の「つながらない権利」が徹底していてすごかった」の内容で、ドイツのホームドクターに「血液検査結果を送って」と依頼したところ、「現在休暇中なので総合窓口にメールしてください。受信した...
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