医師の転職において、採用面接で「年収はいくらを希望しますか?」と質問されることも多く、そこから条件交渉が進んでいくのが基本的であると思われます。
ある程度、転職慣れしていると、採用面接時にそのような質問がくることも予想できますし、条件交渉もスムーズに進められるかもしれません。ですが、私も最初の時は「え?それって直接この場で聞いてくるものなの?どうしよう…」とうろたえてしまったことを覚えています。
そこで今回の記事では、「年収の条件交渉」を上手く進める方法と注意したいポイントについて書いてみたいと思います。
「年収交渉がない」医師転職が危険である理由
そもそもの話、転職をする上で「年収交渉」があるのは普通です。「いくらで働くのか」という対価を交渉なしに転職をするというのは、「よほどの好条件で二つ返事」なのか、あるいは「安く買い叩こうとしているので、あえて年収を伏せているか」という場合が考えられます。
「年収交渉がない」場合、後者がほとんどで「知人の紹介で」なんてケースが多いように思います。面接の場では年収を伏せておき、ろくに雇用条件についての契約書も交わさず、「入職してみて、年収の安さに驚いた。でも、知人の紹介だし、断りづらいし…」なんてことがあったりします。
医師の転職で「希望年収」の決め方はどうするの?
まず、「希望年収」の決め方についてですが、ベースとなるのは現在の年収ではないかな、と思います。
というのも、医師の年収が決定される要素としては、
・経験年数
・資格
・勤務条件(勤務日数、当直やオンコール回数など)
であり、これらの要素を踏まえた上での現在の年収ですので、まずがそこから考えるのが妥当かと思われます。
ですが、「その年収より上を狙いたいから転職するんだ」「同期はもっともらっている」と不満を持っている場合であったり、「せっかく転職するんだから、年収アップを狙いたい」ということでしたら、そこからどのぐらい上積みするのか、という問題があります。
「病院側の希望」を探る上で、まず参考になるのが求人票です。「年収1200~1500万円、例:経験年数10年で1300万円」などと記載されているので、そこを参考にすると増減しやすいと思います。
また、考慮すべきファクターとしては以下のようなものがあります。
希望年収を決定する上で考慮すべきポイントとは?
希望年収を決定する上で、まず考慮すべきことは、転職における「自分自身の市場価値はどの程度か?」というものです。
上記のように、ある程度は「経験年数・資格・勤務条件」で決まってきます。しかし、それ以外にもそのドクターの市場価値を決めるファクターがあります。
診療科目と年収
ドクターの市場価値を決める重要な点として、「診療科目はなにか?」ということが挙げられます。
勤務医の就労実態と意識に関する調査(労働政策研究・研修機構)にも記載されていますが、やはり脳神経外科・産婦人科・一般外科など、外科系のドクターの方が上位であり、内科医はそれに比べて低い傾向にあります。こうした診療科目ごとの平均年収も参考にする一つ重要なポイントであると思われます。
もちろん、そのドクターの市場価値はその地域のドクター数や病院施設数などの受給状況にもよって一概には言えませんが、こうした診療科目による平均値などは一応のところ念頭においておいた方がよろしいかと思います。
国公立か?民間病院か?
国公立病院と民間病院の年収差で言いますと、やはり民間病院の方が年収が一般的には高いと言われています。この点、「今まで国公立病院で、今後は民間病院で」と転職を考えた場合、相場感的にやや高めの希望年収を検討することも可能であると思われます。
ですので、「今までの年収がこれぐらいだから、転職してもこのぐらいでいいか」と考えていると、そのギャップに驚くなんてこともあるかもしれません。
年収アップを実現するための交渉ポイントとは?
では、具体的に年収アップを実現するために「どんな交渉をすべきなのか?」という話に移っていきたいと思います。
まず基本的に、病院側には「こうした医師を雇いたい」というニーズがあります。そのニーズをしっかりと押さえ、採用面接の場で上手くアピールすることが交渉の鍵と言えます。
病院ごとにニーズは異なるとは思いますが、一般的には以下のような点に着目することが重要であると考えられます。
専門性か?ジェネラルか?
医師の採用面接での場でのアピールと言いますと、「今まで、こんな高度医療機関で、こんな専門性の高いキャリアを積んできました」とやってしまいがちですが、特に民間病院ですと、それが裏目に出ることもあります。
「専門性の高さ」も重要なことですが、むしろ民間病院では「様々な病気を抱える高齢者の全身管理」ができる医師を求めていることが往々にしてあります。また、外来や入院患者でも、「それはウチの科じゃないだろ」と新患の受け入れを拒否する医師に医療機関が悩まされる、なんてケースもあったりします。
ですので、専門性を売りにするばかりではなく、「高齢者の全身管理などもできます」「消化器内科だけでなく、一般内科も外来で対応できます」など、守備範囲の広さをアピールすることも、年収アップのための交渉術ではあります。
病院にとっての収益化
「病院の利益にどれだけ貢献できるか」という視点での経験・キャリアのアピール方法も重要です。
たとえばその分野での特殊な外来で収益性が見込めるか、といったことであれば年収アップだけでなく、採否にも大きく関わることであり、アピールすべきポイントであると思われます。
業務負担の代わりに年収アップを
当直回数やオンコール回数、あるいは外来の担当コマ数など、「もう少し担当できそうだな」ということであれば、「業務負担をもう少し増やせるので、その分、年収アップを検討いただけませんか?」と交渉することも可能だと思います。
「年収、もう一息アップしてもらいたいんだけどな。でも、これ以上は厳しそうだ」というようなケースであれば、「もう少し業務を負担できるので、それでもう100万アップしてもらえませんか?」といった交渉もできると思います。
この点、やはり「非常勤やスポットのバイトを雇うぐらいだったら、私を使った方がお安く済むでしょ?」といった交渉術であり、なおかつ業務負担は増えることにはなりますが、それも許容できれば大いに検討すべきことだと思われます。
「管理職経験者」をアピールする上でのポイント
「管理職」としての経験があると、基本的に年収アップがしやすいこともあります。この点、管理職の求人を見ていますと、病院側は「管理職の経験者求む」となっており、経験の有無は募集段階で非常に大きいと思われます。
ヒラのドクターとしてばかりではなく、「管理職」として、特に部長職以上の経験がある場合は、市場価値が高くなり、場合によっては「副院長としてご勤務いただきたい」なんて話になることもあります。
ですので、部長職以上の経験があるということでしたら、「管理職」経験、特に後進育成でどのようなことをやってきたのかをアピールするということも重要です。
年収アップが見込める「狙い目の病院」とは?
病院の募集背景でも、年収アップが見込めることがあります。たとえば、転職シーズン(秋口~3月などの1月、4月の転職が活発に行われる時期)ではない時期に急な欠員が出たようなケースでは、年末アップが見込めます。
あるいは、「新規で診療科目を立ち上げる」「新病院が開院する」などのケースであっても、「報酬は弾むから来ておくれ」というケースになる場合があります。
ですので、「急募」「新規立ち上げ」などのキーワード求人を狙っていると、思わぬ年収アップを見込めるかもしれません。
以上です。
上記内容で、「求人票で年収の幅を知る」「病院側のニーズを捉える」「自分自身の市場価値を知る」といったことは、なかなか自分では難しかったりします。また、採用面接前もしくは後の交渉なども、自分自身では難しいと思います。
その点、リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアなどの転職エージェントに相談した上で転職活動を行うことで可能です。
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