専攻医などの若手医師がドロッポ医より「参入障壁」の高い産業医を目指すべき理由

私が後期研修医をドロップアウトした頃、「もう常勤で勤務医をやるのも疲れたなぁ…バイトだけでなんとか食いつなげないか」としばらく思っていましたし、実際に産業医になるまでの間、ドロッポ医生活を送っていました。

ドロッポ医とは、常勤の勤務医から「ドロップアウト」して、専門性の高くない非常勤バイト・スポットバイトなどで食いつないでいく医師のことを指します。私はちょうど冬季だったのでインフルエンザのワクチン接種バイト(の問診)をよくやっていました。

そんな経験も踏まえつつ、もし現在、専攻医を辞めようと決めた若手ドクターがいたとして、「ドロッポ医より産業医を勧めるのはなぜですか?」と質問されたとしたら、以下のように答えると思います。

2つの参入障壁で守られている

産業医になるには、医師免許だけではダメで、以下のような要件があります。

1) 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者が行うものを修了した者
2) 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修した者
3) 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
4) 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る)の職にあり、又はあった者
5) その他厚生労働大臣が定める者

現実的には、私を含めて「認定産業医」になって産業医になる方が大多数だと思います。この「認定産業医」になるための条件としては、まだまだ予約が困難な講座で50単位を集める必要があるわけです。

これがかなり面倒である上に、集中講座を受けるとなれば時間もお金もかかります(7~8万円前後の研修費用、これに宿泊費・交通費がかかることも)。これがまず一つ目の参入障壁となっています。

さらに、初期研修修了後、ほとんどの方が臨床医になる中、わざわざ「産業医を選ぶ」という人はかなり少ないです。そこに加え、「産業医未経験の壁」というのもあり、一社目で働くにはそれなりに苦労します。この点もいわば参入障壁となりうると思います。

産業医として本格的に働き出したとすれば、このいわば2つの参入障壁に守られた状態で働く、職探しができるわけです。

参入障壁がある→過当競争が起こりにくい

時給1万円というある程度のラインはありますが、医師のバイト代は上がりにくくなっていますし、さらに言えば求人自体が減少傾向にあります。

これは殿様商売・どんぶり勘定であっても儲かっていた病院・クリニックが減り、「バイトを雇うより、常勤医師で回した方がリーズナブル」という方針転換を図っていることも一つの要因だと思われます。

以前から、都市部のバイト求人には応募が多く、好条件なものはすぐに充足してあまり条件のよくない求人であっても残りわずか、という状態になりつつあります。

もしドロッポ医になった場合、こうした求人ゲットのための心配をしつつ、条件の悪化を肌で感じながら働かなければならないということになってしまいます。

この点、ある程度の参入障壁があって過当競争を避けられる産業医はおすすめだと思います。さらには、常勤でQOML高く働けるというメリットもあります。

「勤務して経験を積む」ことがキャリアになる

まだまだ産業医は少ない状態ですので、「ある程度の経験を積んだ産業医」は希少です。その点、「勤務して経験を積む」ことがキャリアになると言えると思います。

ドロッポ医を長年続けたとしても、果たしてそれをキャリアと考えてくれる病院やクリニックがあるとは考えづらいため、その点も産業医になる上でのメリットになると思います。

ついでに途中で労働衛生コンサルタント試験に合格できれば、より「あ、産業医としてちゃんとしてるのね」と思われると思いますので、おすすめです。なお、条件を満たせば筆記試験を免除されて口述試験のみで合格できます。

以上です。
「参入障壁」については、まず認定産業医になる方法は

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