産業医になったとしても、そこから臨床医へと戻る方もおられます。実際、元々は内科医でしたが、産業医になってメンタルヘルスの重要性に気づき、精神科医へと転科したというドクターもいます。
また、別の方は「産業医はやってみたけど、性に合わなくて臨床医に戻る」ということで、産業医をお辞めになっています。ですので、もし臨床医の先生で「臨床医をやってみたいけど…」と思っておられるようでしたら、実際にやってみたらいいのに、と私としては思うわけです。
私が後期研修医だった頃、癌で外来化学療法をされておられた患者さんがおり、「それでも働きたいんです」とおっしゃっている方がおり、正直、「いや、大病しつつ働くのは…どうなんだろうか?」と思っておりました。
しかしながら産業医として、癌患者でありながら勤務されておられる社員さんをサポートしていく内に、経済的な意味だけではなく、「働きたい」と思われる方々の気持ちも理解できるようになっていきました。また、産業医として「主治医にどのようなサポートを求めたいのか」ということが分かり、外来診療でも役立っていると思います。
実際に産業医をやってみますと、「産業医の視点」が臨床医の視点に加わり、より広い範囲が見えるようになったと思います。「病気を治す」ことだけでなく、働き、日常生活を送る患者さんにどう接したらいいのか、より理解できるようになったのではないでしょうか。
だからこそ、「産業医を経験する」ことは臨床医にとってもプラスになりますし、30代までの比較的若い年齢で産業医になってみることはとても有意義なことだと思います(自戒の意味を込めて、臨床に戻りやすくする上でも、専門医資格を取得しておくことをオススメしたいですが)。
もし現在、臨床医で「産業医をやってみたい」ということでしたら、ぜひとも経験してみてはいかがでしょうか。ただ、未経験で常勤産業医になるのはなかなか困難であるため、リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアなどの転職エージェントにご相談されることをオススメしたいと思います。