臨床医として、身を粉にして勤務されておられたドクターが、「燃え尽き」てしまって退職した後、「さて、次はどうしようか」ということで産業医を選択されるというケースがあります。
私自身も、後期研修医の際に先輩医師から「産業医の資格は、臨床を続けられなくなったときの保険として持っておくといい」と勧められたこともあり、もしかしたら臨床がしんどくなったら産業医、というイメージをお持ちの方が多いのかもしれませんね。
しかしながら、私としましては、「燃え尽き症候群で産業医」という転職はあまりオススメできないと思います。今回はその理由について書いてみたいと思います。
意外と高い常勤産業医になるハードル
認定産業医の資格をすでに取得しているという前提ですが、それであっても産業医未経験のドクターが常勤産業医の内定を得るのは、結構大変です。
そもそもが求人数自体が少なく、なおかつ倍率も高いということで、おそらく臨床医としての転職よりも困難であるということが言えると思われます。
下手をすると、燃え尽き状態でメンタルが不安定な中、厳しい転職活動を強いられる、ということも可能性としてあります。さらに言えば、「それほど産業医になりたいというわけでもない。でも、臨床医よりは楽そうだから…」という理由で産業医になるための転職活動をしていると、より苦しくなるのが目に見えています。
ですので、「おいそれとなれる」というものではないことは認識しておいた方がよろしいかと思います。
新たな環境へ適応するためのストレス
そもそも企業で勤務する、ということは病院での勤務とはまるっきり違う環境ですし、新たな人間関係の中に飛び込むということになります。
「当直なし・オンコールなし・時間外問い合わせや呼び出しなし・残業なし」ということで、身体的にはたしかに楽と言えるかもしれませんが、それでも感じるストレスは産業医になった当初はより強くなるかもしれません。
ですので、「産業医は楽でいい」と思い込んで飛び込みますと、痛い目を見てしまう可能性もあるかもしれません。
臨床か産業医か
臨床医として勤務することがそもそも好きで、産業医になっても「やっぱり臨床がいいな」と思って臨床医に戻る方もおられます。そのように、「根っから臨床好き」という方にとっては、産業医業務は苦痛になる可能性があります。
私は認定産業医になるための講習会で「産業医って仕事、面白そう」と思えた口ですので、だからこそ産業医を続けてこれているのかな、と思っています。一方、「臨床医を続けたいけど、体が限界…」ということでしたら、臨床医として無理なく働ける勤務条件での求人を探すべきなのではないか、と私としては思います。
もし現在の職場で疲れ果ててしまっていても、「それでも臨床医を続けたい」ということでしたら、産業医というよりは、リクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアなどにご登録の上、転職エージェントにご相談して無理なく働ける職をお探しになることをオススメしたいと思います。